75話 友達になろうよ。
75話 友達になろうよ。
「センエースは、ありとあらゆる世界の全ての業を背負った哀しいモンスター。すべての絶望を喰らい尽くし、その果てに、すべての闇を、その輝きで照らすサダメにある、可能性の獣……」
「いや、そんな『世界中の厨二を煮詰めたような運命』は背負っちゃいねぇよ。俺はただの、恋人も友達もいない、真正のフルボッチってだけだから。ファッションじゃないからお着替えできない、孤高界の帝王ってだけの話」
と、冷静に訂正を加えていくセン。
そんな、クソどうでもいい会話をしているセンたちに、
今回のチームメンバーの一人である『ゴーストライト』が、
「ニーサンたち、楽しそうだなぁ、俺も混ぜてくれ。何を話していたんだ?」
と、めちゃくちゃフランクに、陽キャ感を出しながら、
センの隣にドカっと腰をかけた。
全体的にパリっとした雰囲気。
華やかさは薄いのだが、しかし、気品のある上流さを感じさせる男。
深い知性も、肉体的なたくましさも、両方を兼ね備えた、バランスのいいイケメン。
彼のフランクさ、人としての出来のよさ、『良い感じの男前具合』に対して、
「うわぁあ……よ、陽キャだぁ……陽キャがきたぁ……っ」
と、おびえるセン。
どこまでも残念な男である。
「ひぃぃぃ……目が、目がぁ……」
と、テンプレを交えつつ、己の無様さをひけらかすセンを尻目に、
ゴーストライトが、紙野に、
「? 彼、どうしたの?」
と、尋ねると、
「そいつは『陰キャの理想個体かつ努力値カンスト勢』だから、陽キャとは永遠に相いれないサダメ。イカロスの翼のように、陽キャの太陽に触れると溶けて落ちてしまう、そういう悲しい『性格ゾンビ』なんだよ」
紙野の補足に対し、
センは渋い顔で、
「……紙野……お前の補足は、方向性こそ間違っていないんだけど、なんか、ちょこちょこ腹立つなぁ。上質な悪意を感じるんだよ。俺をディスるのは別にいいんだけど、もっと、こう、ファンキーかつポップにしてくれない? さすがに、そろそろ、キュっとひねって殺すよ? 法律上の問題さえなくなったら、いつでもいけるレベルで温まってっから、そこんとこよろしく」
互いに、チクチクやりあっているセンと紙野の二人を交互に見てから、
ゴーストライトが、
「いいねぇ。ニーサンたち、おもしろいよ。どう? 俺と友達にならない?」
と、さわやかに微笑みながら申告してきた。
それに対し、センは、
「とも……だち……? えっと、俺は、それが食べられるかどうか聞けばいいのかな? 悪いけど、俺、庶民だから、上級国民限定の概念は、理解することすら難しいんだ」
続けて紙野が、
「ゴーストライト、お前はすでに俺の友達だよ。基本的に、俺は『マウントを取る時』に、『特待生全員とマブダチ』というスタンスで入るから。よって、いまから友達になることはできない。だってもうマブだから。俺とお前らは、『俺限定でメリットがある不平等条約的な利害関係』という『あったかい絆』で結ばれた『心の友』だから」




