73話 人間関係の問題は、どこにでもある。
73話 人間関係の問題は、どこにでもある。
「……残飯マンと本気の対話を望むのは別にいいんだけど、その手段として、名前を侮蔑するのは、あまりにも美的意識にかける。次、同じことをしたら、両腕をもらうよ。感情的になることを否定はしないけど、できるだけ、スマートにいこうよ。その方が美しい」
仲裁をしているアストロギアを横目に、
ずっと、穏やかにベンチでくつろいでいるワイトマジェスが、
「……『庶民(一般クラス)』と合同で体育をしている最中に、わざわざ、機密事項をもらしたり、暴れたり、呪符をつかったり……あなたたちは、全員、『神話生物研究会のメンバー』としての気品にかけますね。特に、ズシオー……あなたは酷い」
と、おだやかに、チームメンバーを下賤扱いしていく。
上流階級思考とでもいうべき、選民意識が強いワイトマジェス。
彼のソレは、『特権を貪る豚』のような『クソ貴族的な選民意識』ではない。
『位高ければ徳高きを要す』という概念を理解している、本物のアッパークラス。
気品と誇りを大事にする後衛職のワイトマジェスと、
感情論の獣である前線職のズシオーは、正式に水と油。
――と言った感じで、ごちゃごちゃやっている『彼ら』を尻目に、
バンプティが、
「ほれ、チェンジじゃぞ……いつまでも、じゃれとらんで、守備につかんか」
と、全体のシメを担当する。
男性陣側の学級委員長的なポジションについているのがバンプティ。
望んでこの地位にいるのではなく、流れ的に、そうなってしまっただけ。
当人は、そんなポジにいたくないと思っているのだが、こういう役回りは『性格』で決まってしまうので、当人が何を思おうと関係ない。
特待生だろうとなんだろうと、その辺の『人間関係的な面倒ごと・厄介事』は生じてしまうもの。
人間である以上、どれだけ優秀な個体があつまろうと、『人間関係上の問題』からは逃げられない。
ちなみに、この辺の『ごちゃごちゃした関係性』は、『今回だけの特別』ではなく、
神話生物研究会メンバーの基本的な日常。
現状、互いに互いが必要なので、結託しているものの、
しかし、それぞれ、べつに『仲がいい』わけではない。
『同じ目標』に向かって進んでいるのは『事実』だが、
しかし、結局のところはそれだけの関係性でしかない。
★
ベンチに戻ってきたセンは、
「なんか、向こう、めちゃくちゃモメてなかったか? 顔面にアイアンクローを決め込んだり、普通に全力で殴ったりしてたぞ……お前ら、仲悪すぎん?」
と、後ろのベンチに腰を掛けているヒッキに声をかけた。
ヒッキは、アクビをしながら、
「別に、『仲いい必要』がないからなぁ……私たちは、たまたま、同じコミュニティに属しているだけで、『お友達』ってわけじゃない。ちなみに言っておくと、私に友達はいない。一人も」
「あ、そうなんだ。同じ、同じ。俺も、俺も」
と、嬉しそうに同類宣言をかましていくセンに、
紙野が、
「同じじゃねぇだろ」
と、冷めたツッコミを入れてきやがる。
センは、ゴミを見る目で、
「確かに、頭の良さや、顔面偏差値や身体能力や才能では劣っているだろう。それは認めるにやぶさかではない。しかし、友達がいないという一点だけは、事実、同列だろうが。ああ、もちろん、それ以外の部分では劣っているさ。もちろん、もちろん、当然、当然。しかし、『友達がいない』という『対人関係の領域のみを抽出してイーブンとして見ること』の、いったい、何が悪い」
「対人関係の部分だけを抽出したとしてもイーブンじゃねぇっつってんだよ。……だって、そいつ、彼女いるし」
「なん……だと……」




