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68話 一般人をナメんなよ。


 68話 一般人をナメんなよ。


「あん? ……まだ、イニング終わってねぇじゃん……私の打順でもないし……え、なんで、起こした?」


 と、ブチギレ顔で、ヒッキを睨むルギル。

 そんな彼に、ヒッキは、ケロっとした顔で、


「私の悲観に同情してもらいたかったから」


「何を言ってるのか、一ミリもわかんねぇ」


「だから、カンツたちみたいな異常体力組と、私らみたいな『ほぼ一般人』は、別枠にすべきだよなぁって。一緒にされて迷惑だよなぁって。……そんな私の悲痛な叫びに対して、お前に『それな』って言ってもらいたかった。だから、起こした。ほら、合理的」


「……お前、ほんと、頭湧いてんな……キライだわぁ」


 死ぬほどダルそうにそうつぶやいてから、

 ルギルは、ごろんと横になって、正式に寝始めた。

 今度は、目をしっかりと閉じて、完全睡眠モード。


 そんなルギルの体をゆすって、


「寝る前に、同意してくれ。私の傷をなめてくれ」


「うざぁあああい! 死ねぇえええ! 二度と、話かけるな、かすぅ! ぼけぇ!」


 一度、バチギレしてから、

 すやすやと睡眠を再開するルギル。


 そんな彼を尻目に、

 ヒッキは、ボソっと、


「ダメだ、こいつ……人間性に問題がありすぎる。特待生に選ばれている連中は、ほんと、みんな、クソすぎる。なあ、君もそう思うだろう?」


 と、同意を求められたセンは、

 ボソっと、


「人間性という論点で話すなら、お前も、大概たいがいだけどな……」


 と、素直な感想を口にした。


「え、私は普通だろ? 身体能力も、見た目も、中身も、特待生組の中では、一番まとも。ほぼ完全に一般人。下手したら、一般人の中で下の方まである。……そんな私は、特待生組の良心と言っても過言ではないだろう?」


「……ちなみに、ヒッキ……お前、握力、どのぐらい?」


「72キロ」


「50メートル走は?」


「5秒ちょい」


「全国模試、何位?」


「だいたい、10位ぐらい」


「IQは?」


「170ぐらい」


「……バケモンが……一般人をナメんなよ。あと、そういう数値的な異常性をのぞいても、お前、人間性の部分でも、ちゃんと『やばそうな問題』が見え隠れしているぞ」


「え、どの辺が?」


「ガチのキョトン顔ができるその辺だよ。ちゃんと理解しておけ。一般人とは、俺みたいなヤツのことを言うんだ。ほら、見てみろ。上から下まで、完璧なモブだろう? 背景に対する溶け込み方がハンパなかろう? 達人レベルのぎょうを使わないと、存在を認識できないほどの、完璧な絶。この領域にいたって、初めて、『一般人』という『高尚な概念』を名乗れる。一般人の中でも、特に、抜きんでた凡庸性を持つのが、この俺様だ。俺ほどの量産型汎用ライトノベル主人公はそうそういないぞ。中身も見た目も完璧。もはや、ここにいるのかいないのか、俺自身ですら分からん」


 と、そんなことを言うセンを尻目に、

 何か言いたげな顔をしている、隣の紙野。


 その視線に気づいたセンは、


「なんだよ。何か言いたそうな顔じゃないか、紙野くん。意見があるなら、聞こうじゃないか」


「少なくとも、この中では、俺が一番まともかなぁ」


「……『自分の方が、特待生より上だ』などとぬかしきれるラリったエキセントリックさを忘れたか?」



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