66話 あいつら、人間じゃねぇ。
66話 あいつら、人間じゃねぇ。
異常レベルのバケモノ、カンツ・ソーヨーシ。
そんなカンツに匹敵し、特定の分野においては凌駕している天才、
アストロギア・ハザード。
――そんなアストロギアは、
「カンツほどの剛速球は投げられないけど、変化球には自信があるからねぇ。私も、完全試合を狙わせてもらうよ」
などと、完全試合宣言を決め込んだ上で、
『カミソリみたいなシュート』や『打席からは消えたように見えるフォーク』で、一般生徒をハメ殺していくアストロギア。
正直、一般生徒なんか、ど真ん中ストレートオンリーでも、余裕で仕留めることは可能。
カンツほど速い剛速球は投げられないが、アストロギアが本気を出せば、普通に150キロ以上の速度を出せる。
150キロという数字は、一流の体格と才能を持ち、一流の努力を積んだプロだけが到達できる領域。
しかし、そういう常識をぶっ飛ばしていくのが『天才』という理不尽。
アストロギアの速球は、ただ時速の数値が高いだけではなく、バッチバチのスピンをかけた、鬼のようにノビのあるフォーシーム。
プロ級のキレがある速球なんか、一般高校生が打てるわけがない。
そんなことは、アストロギアも分かっているが、
体育の間、アストロギアは、一般高校生相手にも、
ちゃんと、『本気』を魅せつける。
今回の野球だけではなく、
陸上競技の時も、サッカーやバスケの時も、
特待生は、手を抜かず、ちゃんと、
一般高校生相手に、本気の『次元が違う姿』を魅せつける。
一般生徒たちは、彼らの『異次元』に、間近で触れることで、
『人類の高み』を知り、その可能性に未来を見る。
……という、なんだか、よく分からない思想で、これらの合同体育は行われている。
国や学校がどう思おうが、ぶっちゃけ、知ったこっちゃなく、
一般生徒は、特待生の異常性を目の当たりにして、
いつも、ただただ、
「「「「「……あ、あいつら、人間じゃねぇ」」」」」
と、おののくばかり。
投手アストロギアと打者カンツの勝負は壮絶を極めた。
ゴッキゴキに、四隅のピンズドを、鋭角な変化球でかすめていくアストロギアの投げまわしに、カンツは、野生勘だけでくらいつく。
5回のファールを経て、ついに、カンツのバットが、アストロギアの球を捉えた。
まるで、風神みたいなスイングのキレ。
見えないバッドにさらわれて、
打球はぐんぐんと伸びていく。
普通にサク越えの一打だが、
「ズシオーっ!」
アストロギアのかけ声が響き渡る。
その声に応えるわけではないが、レフトを守っているズシオーが、
「ふんぬらばぁっ!」
先ほどのアクバート以上のダッシュと跳躍力で、
完全にサク越えの一打をグラブにおさめた。
それを見たカンツが、
「がはははは! 相変わらずの、ふざけた身体能力だな、ズシオー。今の打球を取るとは、お見事、お見事ぉ!」
などと叫んでいる彼を尻目に、
センは、渋い顔で、
「身体能力のふざけ具合で言えば、お前の方が上だよ……」
と、素直な感想をボソっと口にする。




