65話 人間じゃない。
65話 人間じゃない。
野球が、一般的な高校体育で選ばれない理由は、『難しすぎるから』である。がっつりと、毎日練習しているピッチャーでも、ちゃんと『ストライク』に入れるのは、実のところ、一苦労。外野がフライをさばくのも、内野がゴロをさばくのも、ちゃんと練習している球児でも、実のところ、一苦労。
バキバキの名門校で毎日、朝から晩まで練習し続けている化け物たちですら、エラーは当たり前。
プロでも、内野ゴロをさばきミスするのは日常茶飯事。
まともに守備と打撃ができるようになるには、数年単位の『特化した鍛錬』が必須。
そんな、難しすぎるスポーツ『野球』を、
特に、普段練習しているというわけでもないのに、
神話生物研究会のメンバーは――
「がはははははっ! 行くぞ、アストロギアぁ! だぁりゃぁああ!」
振りかぶって投げられた、剛速球。
その速度は、168キロ。
ここは、『スピードガンがセットされている野球専用のグラウンド』なので、常に、ピッチャーの投げた時速は計測できている。
168キロは、人類の到達点クラス。
メジャーリーガーの中でも、史上最速クラスの超速球派だけが届く世界。
それを、ポンポンと投げ続けているのが、カンツという異常者。
人類の最高峰クラスの速球。
そんな、カンツの170キロ近い剛速球を、
「ほいっと」
アストロギアは、当たり前のように芯でとらえる。
まったく練習などしたことないはずなのに、
天性の運動勘だけで、超絶技能を魅せつける天才。
「げぇっ! いかん! アクバート!」
「問題ない。届く範囲だ」
ぐんぐん伸びていく打球に対し、
外野のアクバートは、とんでもない速度のダッシュで近づき、フェンスを踏み台にして、確定サク越えの一打をグラブに収めてみせた。
メジャーリーガーでも出来るかどうか分からない神プレーを連発するイカれたメンバー。
どいつもこいつも、運動能力がケタ違い。
「ナイキャッチィ! がはははは! このまま、完全試合といこうかぁ!」
一般クラスと特待クラスの面々を、戦力が固まらないよう、ごちゃまぜにした上で行われている試合。
特待クラスの面々が、あまりにもレベル違いすぎて、一般クラスの面々は、彼らの神プレイを間近で見られるラッキーなお客さんでしかなかった。
チェンジになってベンチに戻ってきたセンは、
同じチームのエースであるカンツをチラ見して、
(……に、人間じゃない……)
という、『いつもの感想』を抱きつつ、
相手チームのエースであるアストロギアにも目線を向けて、
(あいつも人間じゃねぇ……)
と、素直な感想を抱く。
カンツが化け物であることは、言動&体格が目立つ存在であるということから、誰もがご存じ極まりない周知の事実。
あまりにも異質なバイタリティ。
人外の天才。
そんなカンツに匹敵する――というか、『特定の分野』では『普通に凌駕している』のが、今、マウンドに立っているアストロギア・ハザードという男。
噂では、陰陽道に精通しているという話だが、一般人視点だと、その陰陽道というのが、あまりにもなじみがなさすぎて、イマイチ、よく分からない、という認識。
『超高校級の占い師』的な存在なのかな?
――というのが、一般人視点における、アストロギアに対する認識。




