57話 この物語の主人公『カンツさん』と、それを横目にドン引いているモブ『センさん』。
57話 この物語の主人公『カンツさん』と、それを横目にドン引いているモブ『センさん』。
世界的に超有名な超人高校生であるカンツは、今、
「がはははははは!」
と、ラリったように笑いながら、日課である『外周の走り込み』を行っていた。
朝のうちに、毎日10周するのが彼のルーティン。
時空桐作学園は、超マンモス高校で、外周は10キロほどあるのだが、
それを、毎日、腹の底から笑いながら10周する、という、
頭おかしいとんでもないことをしているのが、彼、カンツさん。
毎日、そんなことをしている姿を魅せつけられているため、
この学園の生徒で、彼の『無尽蔵の体力』を知らない者はいない。
とんでもない速度で走り去っていくカンツの背中を見送りながら、センは、
(相変わらず、えげつない体力……人間じゃねぇ……)
ドン引きしながら、校門をくぐる。
ちなみに、カンツは、体力だけではなく、『運動神経』という点でも超人であり、
野球をやらせれば、剛速球だけではなく、
七色の変化球もキッチリと投げ分け、
キャッチャーが構えたところに寸分たがわずに投げ分けるコントロールも完備。
テストでオール満点は当たり前、
芸術の分野でも他を圧倒。
(神話生物研究会の連中は、全員が、あのカンツに匹敵する天才って言われてんだよなぁ……すげぇなぁ……アレに匹敵するのが25人って……いや、多すぎだろう……)
もちろん、さすがに、『万能さ』で言えば、みな、カンツよりも劣るのだが、
しかし、『運動』という点だけに絞った場合、
カンツと同等かそれ以上の者が5~6人いる。
勉強にしぼっても、同等もしくはそれ以上の者が5~6いる。
当然、芸術の分野にしぼっても、5~6人。
勉強やスポーツや芸術の分野では劣っていても、それ以外の何かしらは、カンツ以上に尖った才能を持つ――といのが、神話生物研究会に所属している者の特徴。
神話生物研究会に所属している25人は、全員が、超高校級の超人。
なぜ、そんなにも多くの天才が集結しているのか、
そんな天才たちが集まって何をしているのか、
すべてが謎だが、とにかく、カリスマ性だけはハンパない。
それが、時空桐作学園の神話生物研究会。
★
問題なく教室に辿り着き、
自分の席についたところで、
後ろの席の『紙野ボーレ』が、
「おはよう、閃」
などと、さわやかに声をかけてきた。
センは、彼の顔を横目で観察しながら、
「……ぁあ……うん……」
と、曖昧な返しをする。
優れた厨二病患者は、『おはよう』などというナウでヤングでトレンディなバリイカシタナイスガイな言葉は使わない。
――という、そんな大前提ももちろん、このシーンでは、介在してきているわけだが、しかし、曖昧な返事になった理由の中で、もっとも大きな領域を占めているのは、『紙野』こそが、『夢を終わらせた人物である』という点。
物理的に、最も距離感の近い知り合いであるがゆえに、ラスボスとして夢の中に組み込まれただけ――というのであれば、センの妄想力が痛々しいだけで、特に何の問題もない話ではあるのだが、もし、仮に、彼が、正真正銘のラスボスだった場合『背後を取らせておくのはいかがなものか』などと、センは、ごちゃごちゃと考える。




