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64話 転んだだけ。


 64話 転んだだけ。


『こ、ここまで異常なのか……貴様は狂っている……』


「言われなくても知っている。だから、黙って、俺の中でおとなしくしていろ」


 そう命令してから、

 センは、アダムに回復魔法をかけて、

 完全に元の状態に戻すと、

 次に、


「……さて……」


 シューリの蘇生に入る。


 『事前に創っておいた器(淡く輝いている、ソフトボールくらいの球)』を取り出して、その奥に、回収した『シューリのコアオーラ』を収めた。


 ブーーーンと、次元が震えるような音がして、『耀きを放つ器』が、

 『美しい女性の姿』へと変わっていく。



「ん……」



 肉体を取り戻し、目を覚ましたシューリは、



「もしかして……蘇生……させたんでちゅか?」



 途切れ途切れに、


「セン、あんた……なんでもありでちゅね……」


 などと、そんなことを言う彼女を、

 センは、ギュウっと強く抱きしめて、


「……守ってあげられなかった……それどころか、また守られた……すまない……ありがとう……」


 そう言って謝罪すると、

 シューリは、プイっとソッポを向いて、


「転んだだけでちゅよ。あんたを助ける気はありまちぇんでちた」


 アダムの異次元砲で死にかけた時、

 センをかばって死んだことを、

 『転んだだけ』と言い切る、大胆なシューリ。


「……いや、さすがに、それは無理があるだろ」


 と、シューリの豪快過ぎるボケに切り込んでいる途中で、


「う……うーん……」


 アダムが目を覚ました。

 センは、シューリから離れ、

 アダムに近づくと、

 彼女の頭を撫でながら、


「大丈夫か?」


 そう声をかけると、

 アダムは、重たい体をどうにか動かして、

 片膝をつく、臣下の姿勢をとって、


「感謝します……主上様……本当に……本当に……そして、もうしわけありませんでした。己の業に飲まれてしまい……あなた様を……傷つけてしまった……」


 多くの想いを込めて、

 あふれんばかりの涙を流しながら、その言葉を口にした。

 それを受けて、センは、

 精一杯の笑顔を浮かべて、


「……転んだだけだよ。お前を助ける気はなかった。だから、気にするな」


 と、大胆なお茶目をかぶせていった。






 ★






 アダムもシューリも完璧に救いだし、

 100%の大団円に浸っていた時のことだった。

 センの脳内に、いつもの声が響いた。



『――みごとだ、センエース。究極完全体アダム・クリムゾンを倒すとは』



(まあ、それほどでもあるけどね。俺以外には、まー、できんかっただろうね)


 と、全力で調子に乗るセンに、


『お前ならば、次の強敵も倒せるだろう』


(ん? ……つぎ?)


『一週間後に、存在値500兆の敵が出現する』


(……ごひゃく……っ)


 しんどそうに顔をゆがめるセン。

 ただ、


(いや、まあ、でも、一週間あって、500兆なら、どうにかなるか。70億年あれば、もう一回、開くことも不可能じゃ――)


 だいぶしんどいが、不可能ではないな――と、頭の中で計算していると、

 そこで、また爆弾が投下される。




『ちなみに、今回の敵は1体ではない。全部で、10000体だ』




(……はい?)





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― 新着の感想 ―
センの優しさが心に沁みる回でした。 シューリの愛と照れ隠しが詰まった転んだだけを、 センがアダムへの許しと気遣いの言葉として使う場面に、 主人公の器の大きさを感じました。
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