55話 神話生物研究会。
55話 神話生物研究会。
『やべぇヤツに、やべぇことをされた夢』を見ていた……
――『ような気がする』が、しかし、
(……いや、夢じゃねぇだろ……夢じゃねぇよな? え、もしかして、ゼノリカどうこうって、全部夢? ヨグを倒したとか、銀の鍵とか……全部……夢? ……いや、そんなわけ……)
記憶はある。これまでに何があったか。覚えてはいる。
――学校で神話生物が湧いて、そいつらとの闘いで何度も死にかけて、銀の鍵というタイムリープ用のアイテムを使って、何度も、同じ一週間をやり直して、そして、どうにかこうにか、すべての謎を解き明かし、親玉のヨグを叩き潰して、自分の剣にした。
そして、ホームである第二アルファに戻って、カミノとかいう変態と、タワーの中で殺し合って……
全部、一応、覚えている。
覚えてはいるのだが、
なんというか、
『それが全部夢だった可能性』を捨てきれない、
という精神状態にあるのが、現在のセンの心中。
(……あんだけしんどかったことが、全部夢だったとか……それはねぇ……と思うんだが……)
確信がもてなかった。
記憶はあるけれど、どれも、若干、フワフワしている。
輪郭が薄れていて、色もボヤけている。
――と、そこで、センは、
自分の机に目を向けた。
いつも、『銀の鍵』は、そこにおいてあった。
「……ない」
ほかにも、センは、魔法を使って、自分の能力を確かめようとしてみたり、携帯ドラゴンを召喚しようとしてみたり、ヨグを呼び出そうとしてみたが、
「……なんも出来んな……いや、まあ……それが、普通っちゃ……普通……なんだが……」
普通の夢みたいに、
だんだんと薄れていく、ということはなかった。
だが、『そういう夢』もたまにはある。
なぜか、妙に鮮明に憶えている夢。
ヨグどうこう、ゼノリカどうこうが、
すべて、そういう夢だった可能性も、
捨てきれない――というのが、現状。
★
『夢?』から目覚めたセンは、
起きてから数分たった今でも、
まだ、ボンヤリと呆けていた。
(マジで夢だったんかな……嫌だな……)
心の中でつぶやきつつ、
センは、
(もし、全部夢だったとしたら……俺は、深層心理で、『あいつら』を配下にしたいと思っている……みたいな感じなのかなぁ……それは、ほんとにダセぇな……)
自分が通っている学校の『有名人たち』の顔を思い出す。
センが通っている『時空桐作学園』は、日本一のマンモス高であり、
なぜか世界中から、天才・鬼才が集まる、謎のパワースポットとして世界的に有名な高校。
『神話生物研究会』という、謎の部活動が存在し、
その研究会には、世界各国から結集した天才たちが、こぞって在籍している。
『神話生物研究会』は、完全なるスカウト制になっており、
一般人では希望しても入部することが出来ない。
(……カンツやアクバートたちは、一般人の俺では、足元に及ばない天才たち……そんな、雲の上の連中に対する嫉妬心が、歪んだ欲望を産んで……『あいつらに過剰なほど慕われる俺』……という厨二妄想を夢に見たんだとしたら……うわぁ……)




