53話 やばい状況。
53話 やばい状況。
全員が乗り込んだのを確認してから、カンツが、エレベーターを起動させるレバーを引いた。すると、ギュオンギュオンと音が響き渡り、そのまま、
「……っっ……っ???!!!」
その場にいる25人が一斉に気を失った。
「うざぁ、もぉ……当然のようにワナ……しかも、かなりやべぇランク……っ!!」
センだけは、ギリギリのところで、
(や、やべぇ……落ちる……意識が消える……ダメだ……こいつらの保護者である俺が、気絶するわけにはいかねぇっ! お、落ちるなぁあああああっ!)
『センエースエンジン(根性)』という『規格外のチート』をフルで活用して、
どうにか、このやばすぎる現状に耐えるセン。
そんなセンの背後に、
ジオメトリが出現して、
「……いやいや……耐えるなよ……てか、なんで、耐えられるんだよ……どうなってんだよ、お前の根性……『どんなチートを使っても無理な不可能』を、根性だけで可能にするなよ、勘弁してくれ」
ジオメトリの奥から現れた『青年』が、『踏ん張っているセン』を見つめながら、
「ほんと、マジで……なんで? タワー1とタワー2を使って、徹底的に体力を削ったのに……そんな、体力カラカラの状態で……それも、今回使ったのは、かなりガチめのデバッグコマンドだぜ? 普通に考えたら、耐えられるワケないんだけど? お前、ほんと、おかしいよ?」
「……ふぅ……ふぅ……ひぃ……ひぃ……ぐぅ……カミノォ……」
「そうです。私がP型カミノ3号さんです……でも、そんなことは今、どうでもいいよ。俺は、今、目の前で起きている、この異常な奇跡について、とりあえず、ドン引いておきたい……いやぁ、ほんと……お前、おかしい」
「……こいつらに……何をしたぁ……」
バチギレの顔でそう問いかけられたカミノは、
「気絶させて、フラグメントを回収した。これから、お前と十席には、俺が『再構築した、もう一つの世界』に入ってもらう。セレナーデとラプソディの融合世界。めちゃくちゃな音になりそうなのに、意外と調和していた。音楽の世界では、往々にして、そんなことがありえる。知らんけど」
「……てめぇ……何がしたいん……だよ……」
「最初からずっと言っているだろ。お前の望みを叶えてやっているんだよ」
「……」
「もっと、もっと、強くなれ。センエース。……そうじゃないと……ちょっと、まずいことになるかもしれねぇから……」
「……ぁあ……?」
「ヌルが思った以上に膨張していたんだ……正直、サクっと封印できると思っていた……ナメていた……もしかしたら、このまま、はじき返されるかも……いや、もしかしたらというか……多分……返される……」
「……」
「ヌルをナメていた。ナメすぎていた……で、今になって思うんだけど……それが、あいつの能力の一つなんじゃないかと思う。『敵に過剰なほど己をナメさせる』という能力……これは、アホみたいだけど、よくよく深く考えてみると、かなり厄介な能力だ……こちらに『万全』や『警戒』を許さない資質……『足元をすくう』ことに特化した力。たぶん、テンドーの戦略的資質を、自身のパッシブへと昇華させている。その上で、セイバーの『脆さ』をコーティング……かなり特殊だが、いいビルドをしているよ」




