50話 よきにはからえ。
50話 よきにはからえ。
ここまでの『あれやこれや』で、ただでさえ、そうとう疲れてきていたのに、高ランクの衰弱をくらったことで、フラッフラの、ヘロッヘロになるセンエース。
だが、そんな無様な姿を配下の面々に見せる訳にはいかない、と、無理に自分をシャンと立たせるセン。
王としての見栄もあるし、心配されるのは鬱陶しいという想いもある。
様々な想いでがんじがらめになりながら、そんな中で、無理に意地を張ったりするものだから、余計に体力をもっていかれる。
(……あ、やばい……気絶しそう……)
と、『実は倒れる一歩手前の状態』でありながら、
しかし、
「陛下、お体は大丈夫ですか? 最後に、あの者から、『ただならぬ呪い』をかけられた模様ですが――」
と、ジャミから心配されると、
センは、
「ジャミよ。たわけたことをぬかすな。俺を誰だと心得る。神界の深層を統べる命の王センエースさんだぞ? 呪いなんか秒でレジストできるに決まっているだろう」
と、気丈にふるまい、
「まあ、現状がタルすぎて、眠気がエグいのは事実だ。つまんねぇ映画の、長ったらしいエンディングロールを眺めているしんどさって感じだな。アクビを我慢するのも疲れるレベル。敵が、もう少し厄介であってくれれば、ちょっとは楽しめるんだが……あまりにヌルすぎて、逆にしんどい。もう、こんな茶番に付き合うのも飽きたから、サクっと、最後のタワーをぶっ壊してくる。ここのコアの破壊は任せたぞ」
最後にそう言い残してから、
センは、『十席とセン』しか入れないタワーへと向かった。
★
タワーに向かう途中の道なりで、
センは、
(あ、ダメだ、これ……死ぬぞ、これ……どうしよう、これ……)
『20日ほど完徹・連勤した社畜』のような状態と言えば、
今のセンさんの状態が、少しはご理解いただけるだろうか。
頭はまわらない。
筋肉も関節も痛みが止まらない。
頻繁に視界がグルグルと回って、吐き気と動悸と眩暈が交互に襲ってくる。
こめかみの深部がズキズキと鈍い痛みを発して止まらない。
感覚器官や臓器の各所が悲鳴をあげているのが分かる。
だが、それでも、センさんは、
(……トドメを……さすだけなら……まだ……なんとか……)
第三のタワーも、『どうせ、これまでと同じ流れだろう』から、
『最後にトドメを刺すだけでいいなら、まだ可能』――と、
自分に言い聞かせながら、センは、
『タワーの前で勢ぞろいしている十席』の前に降り立つ。
総勢25名。
全員が、破格の天才であり、かつ、狂気的な努力を積んできた、休まないウサギ。
磨き抜かれた超天才集団『九華十傑の第十席』の、
『実質的』なリーダーである『カンツ・ソーヨーシ』が、
一歩前に出て、
「陛下。ここまでにおける『タワー攻略』の流れは、ゾメガ様と銃崎殿下から、テレパシーでうかがっております。この第三のタワーでは、トドメも含めて、すべて、ワシらにお任せを。陛下は、我らの働きぶりを見届けてくださるだけで結構です」
バキバキの目で、『全部お任せあれ』と胸を叩くカンツに対し、
センは、ぶっちゃけ、『ありがてぇ』と思っているが、
「俺の獲物を全部かっさらおうって? 相変わらずの大胆さだな。本来であれば、そんな勝手は許さないところだが……その大胆不敵さに免じて、今回ばかりは、お前らに手柄を譲ろう。よきにはからえ」




