49話 愛してるぜ。
49話 愛してるぜ。
「常識にとらわれていたら、何も出来ない。可能性ってのは、いつも、非常識の向こう側にある……そんな現実を……教えてやらぁああ!」
と、叫びながら、カミラは、豪快に暴れ始めた。
明らかに、これまでよりも動きは鈍っているが、しかし、もともと戦闘力が低いので、戦闘力の低下、というのは、そこまで大きな問題になっていない。
それよりも数値の上昇の方が大きく、
専用マシンゴーレムのスペックも高いので、
普通に、ちゃんとパワーアップを果たしていた。
――確かに、強くなっている。
素の状態よりもはるかに。
しかし、
「……問題ない! 物量で押していける!」
と、前衛のジャミが叫んだ。
圧倒的な『手数の差』の前では、
少々のパワーアップなど、ほぼ意味がない。
丁寧に、慎重に、『ゼノリカが誇る高性能な神族たち』は、
専用マシンゴーレムを駆るカミラを押し込んでいく。
ダメージはくらっている。
無傷の楽勝というわけではない。
下手なムーブをすれば、刈り取られる。
数値の差は、もちろん大きい。
――しかし、ゼノリカは最善の奮戦を果たした。
しっかりと、カミラを削っていく。
丁寧に、丁寧に、
慎重に、慎重に、
――それぞれに出来る全てを賭して、
少しでも、ほんのちょっとでも、わずかでもいいから、と、
必死になって、カミラを削っていく。
その結果、
「十分だ! お前ら、愛してるぜ!」
閃拳一発で殺せるぐらい、シッカリと弱ったカミラの前に、
センエースは、ウッキウキのスキップで登場。
最小労力で最大の成果を出せるという、効率厨にはたまらない現状。
『愛している』というメッセージに、ゼノリカの面々は震えているが、しかし、センは、配下が感涙していることに気づいていない。
自分に愛されて喜ぶ人間がいると想定して生きていないから。
いつだって、センエースだけが、己の価値を正しく理解していない。
「閃拳!!」
「どべへぇえええええっ!!」
腹部を思いっきりぶん殴られて、専用マシンゴーレムの外殻がコナゴナに砕け散った。
吹っ飛ばされている中で、
カミノは、
「お、俺の専用マシンゴーレムの特徴は!! 受けたダメージを呪いに変えるぅうう!! 呪いの種類は自由自在! ターゲットは、センエースオンリー! ここまでに受けた全ての『痛み(ダメージ)』を返すぜ! 『衰弱』に変えて!!」
最後の抵抗をみせる。
すでに戦える状態ではなく、死ぬのは確定だが、
別にP型(自分)が何体死のうがどうでもいい、
という、信念を暴走させた神風特攻のスタイル。
命がけの呪いをかけられたセンは、
「どえっ……っ」
ガクっと、ヒザから崩れ落ちそうになった。
(れ、レジストしてんのに……くいついてきやがる……どんだけ重い呪い……)
『呪いをくらったらレジスト』というのは、もはや、センレベルになると反射以上の速度で行われる。
デバフに対するレジストの技能も、破格に高い――はずなのに、
カミラの『おきみやげ』は、センをしっかりと削っていった。
(……これは『暴露を積まれたから』とか、そんなチャチなもんじゃ断じてねぇ……根本的に質が高い『呪』……専用マシンゴーレムとやらの異常性が垣間見られる……)
ここまでの『あれやこれや』で、ただでさえ、そうとう疲れてきていたのに、
高ランクの衰弱をくらったことで、フラッフラの、ヘロッヘロになるセンエース。
だが、そんな無様な姿を配下の面々に見せる訳にはいかない、と、無理に自分をシャンと立たせるセン。
王としての見栄もあるし、心配されるのは鬱陶しいという想いもある。
様々な想いでがんじがらめになりながら、そんな中で、無理に意地を張ったりするものだから、余計に体力をもっていかれる。
悪循環。
とにかく、悪循環。




