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63話 ごはんがなければ、おかしを食べればいいじゃない。


 63話 ごはんがなければ、おかしを食べればいいじゃない。


 すべての限界をブチ斬って、

 いと美しく、舞い散る閃光。



 ――そんなセンの『破格の神々しさ』に、



「……ぅ……」



 アダムは、モブのような嘆息たんそくをもらした。

 アダムの存在感が、ハッキリとうすれた。

 アダムの視界が、弧状こじょうの極光に包まれる。


 動けなくなったアダムに、

 センは、


「――逆気閃拳――」


 神速かつ怜悧れいりな一撃を叩き込む。

 腹部に一直線。

 深い輝きを感じながら、アダムは『くの字』に腰を曲げる。


「げはっ……」


 血を吐き出すと同時、

 アダムの体から、絶死を積んだ証である『真っ赤なオーラ』が消えていく。


「圧倒的上位者の前で、絶死など無意味。数字では、まだ、お前の方が上だが、総合的な強さで言えば、俺はお前を置き去りにしている」



 そんなセンの言葉など、耳に入っていない様子で、

 アダムは、


「うぶっ……うぇええ……っ」


 黒い血を吐き出した。

 とめどなくあふれる黒い血。


 センは、


「アダムを解放しろ」


 と、命令を下した。


 アダムは、


「む、無理だ……」


 意気消沈した声で、


「……『私の消失』は『アダムの死』を意味する……嘘はついていない……もはや、貴様に逆らう気力は残っていない……私は事実のみを口にしている。私とアダムは結局のところ、一つ」


「そんなことは分かっている。誰に口きいてんだ。俺は40億年を積んできた閃光だぞ。もはや、基本的に、不可能なんざない。――消せないのであれば、移し替えればいいじゃない」


 かつて、シューリに言われた『ごはんがなければおかしを食べればいいじゃない』のテンポで、そんなことを言うセン。


 そんなセンに、アダムは、アホを見る目を向けて、


「私に耐えられる器など、アダム以外に存在しな――」


「いるだろ、ここに。最強の器が」


「……」


 アダムは、さらに『アホを見る目』を強めて、吐き捨てるように、


「分かっているのか……私という『業』は次元が違う。『世界を終わらせる』という業。貴様の中に入れば、私は、貴様の可能性を貪り喰らい、最後には、貴様自身をくらいつくすだろう。その時、貴様は、アダムよりも大きな、世界の絶望となる」


「ナメんなよ、カスが。俺は、生まれてから三年、虐待を受けて育ったが、一ミリもグレることなく育った『稀代の一般人』だ。てめぇごときに飲まれて反社に墜ちるようなぬるい精神は持ち合わせていねぇ」


「……」


「俺を食えるもんなら食ってみろよ。もし出来たら、頭なでて褒めてやるよ」


 そう言いながら、

 センは、アダムの中から、『アダムの業』を奪い取る。

 センの中に浸潤してきたソレは、

 さっそく、センの全てを喰らい尽くそうと、暴れ出すが、


「……くく、どうだ? 不味くて食えたもんじゃねぇだろ?」


 『アダムの業』は、『センの中』で、『センの信念』に触れた。

 そのあまりの奇怪さに、『アダムの業』は、ついオロロロロと嘔吐してしまう。


「……ねぇ、人の『中』でゲロ吐くのだけはやめてくれる? 俺、そっちの性癖は持ってねぇから、喜べねぇんだわぁ」


『き、貴様が異常だということは知っていたが……こ、ここまで異常なのか……貴様は狂っている……』


「言われなくても知っている。だから、黙って、俺の中でおとなしくしていろ」


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― 新着の感想 ―
シリアスな場面でのアホを見る目やモブのような嘆息、 といった描写も、緊張感を際立たせていて素晴らしいです。
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