45話 タイガーマザーは、センエース的トゥルーエンドを求めない。
45話 タイガーマザーは、センエース的トゥルーエンドを求めない。
※ ここで、反則だが、『ヨグ』の想いを記しておく。
ヨグは、『完全なる命の循環』を果たせる『超高次概念』を望んでいる。
センエースが、『ソレ』になれる可能性に心の底から期待している。センエースがジンテーゼに届くために利用できるものは、なんでも取り入れたいと考えている。
この精神性は、過保護&スパルタなタイガーマザー(教育ママ)の思想。
ピアノ(指先を動かして脳の知育)に塾(単純な学力の向上)に水泳(受験で必須な体力の向上)に――とにかく、息子が、『よりよい未来を獲得するため』に出来ることは何でもやらせようとする精神性。
カミノが本質的に『何を望んでいるのか』――その点に関しては、ヨグ視点だと、まだまだブラックボックスな訳だが、しかし『カミノという概念は、センエースの教育に利用できる』ということだけは理解できた。
それに、永い間生きてきた経験から、『カミノという肥料』は『間違いなく、センエースの養分として吸収できる側の概念である』とも考えた。
利用し、取り込み、ジンテーゼに近づくための糧としよう――そう考えたヨグは、センのカミノに対する思想を、ここらで、いったん、矯正しようと考えた。
現在、センは、『カミノに対する1000億年分の敵意』を軸に据えることで、『本物のトゥルーエンドに対する執念』を、ギリギリのところで保っている。
この敵意が揺らげば、本物のトゥルーエンドに対する執念を見失い、『別に、この世界で生きていけばいいか』という考え方になってしまう。
それを忌避しているセンに、ヨグは『そんなどうでもいいことにこだわるな』と言いたい、というのが、この状況の事実。
ヨグ的には『センエース以外の命』が、完全であるか否かなど、心底どうでもいい。
センエースがジンテーゼに辿り着けるのであればそれでいい。
そのための最短の道があるのであれば、その道を進めばいい。
――それがヨグの思想。
ヨグは、センと同化した『センと一蓮托生の観念』だが、『センの想い』に寄り添うような『優しい存在』でも、『お兄ちゃん的な存在』でもない。
あくまでも、利害関係が中心にあるパートナー。
センの『本意』など、興味の対象外。
センエースが望む『本物のトゥルーエンド』など、本当に、どうでもいい。
ヨグが求めたジンテーゼに辿り着く事――それだけがヨグの全部。
ゆえに、カミノが再構築した世界で、カミノが用意した訓練を、ありがたく教授し、ここで、ゼノリカを鍛え上げ、自分自身のトレーニングもつみ、余計なことを一切考えず、まっすぐに、完全なるジンテーゼを追及してほしい。
――それがヨグの願い。
センの願いとは根底が異なる。
ヨグの発言、想い、懇願、
そういった、全てを、とりあえず、いったん、汲み取った上で、
センは、
(敵だよ、ヨグ……カミノは敵だ……あいつを倒さないと、俺は未来にいけねぇ)
(……)
(なんか、よくわかんねぇけど……たぶん、ダメなんだよ……このままじゃ……何がダメなのか、正直、ちょっとよくわかんねぇんだけど……けど、俺の奥にある警戒心が、叫んでいる……アホみたいに長く、絶望と向き合ってきた経験が叫んでいるんだよ……『これじゃあ、ダメだ』って……それじゃあ、届かねぇって……詳細は不明だし、論理のカケラも説明できねぇけど……これは、確信だ……核心でもあると思う……)




