44話 とかく日本人はめんどくさくて仕方がない。
44話 とかく日本人はめんどくさくて仕方がない。
(いい訓練になっているではないか。配下どもは、強者を削る訓練。貴様は、より洗練された出力形態の形成……各々にとって、『今』、必要な訓練をさせてもらっている。カミノとやらに感謝するといい)
(感謝ぁ? 俺らを太らせて食おうって敵に、一筆添えたお中元でも贈れってか? ナメんなよ)
(カミノは、どうやら、本当にお前を鍛えようとしている模様。その好意を、疑心暗鬼から、敵意だと誤解するとは、なんとも情けない話)
(疑心暗鬼もクソも、あいつが、自分で、俺らを太らせて食うっつってたんだが?)
(何を言っている? カミノの言葉を思い出せ)
『善意だよ、センエース。ただの純粋な好意による善意。人は人を助けるもの。そうだろう? 決して、お前たちを豚のように太らせてから食べようなんて、そんなあくどいことは考えていない。いいね。考えていないんだからね。勘違いしないでよねっ!』
(カミノは、『そんなことは考えていない』と明言しているではないか。ちゃんと、『勘違いしないでよね』と念まで押している始末。それなのに、うがった捉え方をして、あえて曲解するとは何事か。恥を知れ)
(いや、うん……まあね……イノセントな視点だと、そうなんだけれどもね……ここが、人間関係の難しいところというか、日本人的テンプレの難解なところというか……簡単に言うと、『勘違いしないでよねっ』の中には、『勘違いをしないでほしい』という意味は含まれていないことの方が多い、というか、あえて、その言葉を、煽りで使う場合においては、むしろ『勘違いしてください。本意を間違えないでください』という強い懇願であるパターンが支配的というか、確定的に明らかというか……)
(貴様は何を言っとるんだ?)
(……うっせぇなぁ……日本人はめんどくせぇってことだよ。いろんな世界のいろんな人種を見てきたが、日本人は、飛びぬけてめんどくせぇ種族だった)
ため息交じりに、心の中で、そうつぶやいてから、
(とにもかくにも、あいつ(カミノ)は敵だ)
(根拠が乏しいな)
(いや、根拠はちゃんと――)
(――『勘違いしないでよね』という、お遊びのテンプレセリフ一つを、貴様は、どうして、そこまで信用する?)
(……あ?)
(――『勘違いしないでよね』という言葉を『あえて複雑に使っている可能性』を、どうして、一切、考慮しない? 照れ隠しのテンプレを、『本当の照れ隠し』の『隠れ蓑』に使っている可能性を、なぜ考えない?)
(……)
(考えろ、センエース。カミノは、本当に敵なのか?)
(……)
※ ここで、反則だが、『ヨグ』の想いを記しておく。
ヨグは、『完全なる命の循環』を果たせる『超高次概念』を望んでいる。
センエースが、『ソレ』になれる可能性に、『心の底から期待』している。
センエースがジンテーゼに届くために利用できるものは、なんでも取り入れたいと考えている。
この精神性は、過保護&スパルタな『タイガーマザー(教育ママ)』の思想。




