39話 儀式。
39話 儀式。
「くぅ……やっぱ、強いなぁ……」
カミノは、しんどそうにそうつぶやいてから、懐から、禁止魔カードを取り出すと、破り捨てながら、
「――前衛職の脳筋ども、助けてくれ! センエース相手に、後衛専門の俺一人じゃ、話にならん!」
すると、ジオメトリが展開されていく。
強大な魔力を放つジオメトリの奥から、彼らはやってきた。
あらわれた助っ人は二人。
「P型コトモリキメラ、参上」
「P型セイバーリッチ、参上」
そんな二体の召喚獣を見て、センは、
「はははははぁ! 頼もしい助っ人じゃねぇか! どっちも、数値が微妙だけどなぁ! 残念ながら、世界一膨大な数値を誇る、このウルトラ最強神センエース様の前でハシャげるレベルじゃねぇ! 結局、この世は数値がすべてだってことを教えてやろう! つまり、俺がスーパーガ〇ダムだぁああ! スーパーガ〇ダムが何かってぇ? 説明するのが面倒だから、てめぇで勝手に想像しろぉお!」
そんなセンの発言に対し、
カミノの助っ人である『キメラ』が、
「笑っていられるのも今の内だ! いくぞ、センエェエエス!!」
と叫びながら飛び出した。
その後に続くのかと思いきや、セイバーリッチの方は、
腕を組み、黙って、その趨勢を見守っていた。
キメラは、カミノと比べればかなりの強者で、
なかなかの戦闘力を誇ってはいたが、
「神速閃拳っ!」
豪速ジャブで崩されて、
「閃拳!!」
顔面クリティカルのレシピでフィニッシュをくらうと、
「ぐえぁはっ!」
大量の血を吐いて、吹っ飛び、
「はぁ……はぁ……つっよぉ……マジかよ……」
と、しんどそうに息切れしているキメラ。
そんなキメラの背後に、
セイバーは静かに立っていた。
セイバーは、『まだまだだね』とでも言いたげなけだるさで、
「どうやら俺の出番のようだ……キメラ、下がっているがいい」
「た、頼んだぞ、セイバー」
「ふっ」
と、不敵な笑みを浮かべると、
セイバーは、センの前まで歩いていく。
その背中の頼もしさたるや。
聖なる死神セイバーリッチという、圧倒的に優れた種族である彼のステータスは膨大。
そんな彼が、ついに、本気を出す。
静寂を奏でるような歩調。
その目は、静かに、センエースを見据えている。
歩みは、そのまま圧力となる。
威圧感と、空気の密度が増していく。
そして、セイバーは、自分の領域内に、センエースを捉えると、
――そこで、クルっと、カミノたちの方へ振り返り、
聖剣を構えて、
「さあ、どこからでもかかってこい」
と、大胆な『裏切り行為』をかましてみせる。
そのふざけた行動に対して、
最初にキメラが、
「貴様、やっぱり、そういうヤツだったのか、かすぅ!」
続けて、召喚主であるカミノが、
「みそこなったぞ! 戻ってこい、ぼけぇ!」
そんな罵詈雑言に対し、セイバーリッチは、
「断る。私は常に強い者の味方だ」
と、綺麗なテンプレを決めたところで、
その様子を、後ろから見ていた『平』が、
センに対し、
「師よ……あの茶番は、もしや……」
「ん? ああ、そうだよ。俺の奥義である『センダーランド』と同じ技……つまり、儀式で積んでんだよ……」
センエースの究極真奥義の一つ。
クレヨン閃ちゃんシリーズ、超景戯画トリビュート、センダーランドの大冒険。
『凶悪な召喚獣を複数呼び出し、その内の一体がコミカルに裏切って、敵・味方、双方から呆れられる』という、面倒くさい儀式を経ることで、ようやく、召喚獣の真価を発揮できるようになる、という、なんとも面倒くさいアリア・ギアスがかけられている奥義。




