37話 勘違いしないでよね!
37話 勘違いしないでよね!
「さっそくだけれど、ルールを説明する。このタワーは、俺を倒したら攻略完了。簡単なファーストステージ。チュートリアルだと思ってもらえたらいい。タワーは全部で3本。残り2本は、『五聖』と『九華』と『神帝』しか入れないタワーと、『十席』と『神帝』しか入れないタワー。……この全部を攻略して、それぞれのタワーの最上階に設置されているコアを『一日』で『三つとも破壊』すれば、この3タワーは消滅する」
カミノは、たんたんと、ルール説明を続ける。
「24時間以内にクリアできなかった場合、また、最初から。セーブができない初期のファミコン仕様だと思ってくれ。期限は2~3日ぐらいにしようか。2~3日中に攻略できなかった場合、無限に強くなり続けるバグが、無限に湧き続ける。タワー挑戦中は、どのタワーからもバグは湧かない。どうだ、クールなゲームだろう?」
「ルールは、だいたい理解した。で、お前の目的は?」
「もちろん、お前らを強くすることだよ。セン、勘違いしないでほしいんだけど、俺はお前の敵じゃないよ。むしろ、かなりハイクオリティな『あしながおじさん』だね。このタワーを攻略することで、お前とゼノリカは大きく成長できるだろう」
「……なんで、俺達を強くする?」
「善意だよ、センエース。ただの純粋な好意による善意。人は人を助けるもの。そうだろう? 決して、お前たちを豚のように太らせてから食べようなんて、そんなあくどいことは考えていない。いいね。考えていないんだからね。勘違いしないでよねっ!」
「……ルールはクソだが、今のテンプレセリフは、なかなかクールだったな」
などと、ファントムトークにファントムトークで返す流儀を果たしてから、
「それじゃあ、さっそく殺すから。一つだけ言っておくと、『太らせてから食べよう』という考え自体を否定する気はない。普通に、そっちの方が効率的だろうからな。ただ、それを、俺とゼノリカ相手にやろうとしたのは間違いだってことを、その身に教えてやるよ……パキパキの肉体言語でなぁああああっ!」
そう叫んで飛び出したセン。
三至天帝の三名が、
「「「お待ちください、我々が先に――」」」
と、制止しようとしたが、
そんなもので止まるほどセンさんの猪突猛進は甘くない。
むしろ、
「命令だぁあ! 動くなぁ! これは俺の獲物だぁあ! 汚物を消毒するのは、いつだって、俺様だけの特権! この趣味だけは誰にも邪魔させねぇ! 邪魔するヤツは敵だぁあああ! 邪魔しないヤツは訓練された敵だぁああ! ひゃっはああああああ!」
と、ちょっと何言っているか分からない世紀末なスタイルで、カミノに圧力をかけていく。
そのムーブに対して、カミノは、
「おいおい、いきなりだな……『究極超神化』!!」
覚醒技を使って、存在値を爆上げしてから、センの拳にカウンターを合わせていく。
あまりにぬるいカウンターだったので、
センは、容易に、その動きに対処していく。
対処の対処の対処の対処の対処、
という、なかなか高次の読みあいを経て、
「うべっ!」
カミノは、足元をすくわれて、体勢を崩した。




