33話 まだ、家族会議の途中でしょうが。
33話 まだ、家族会議の途中でしょうが。
「もういいって、この不毛なやりとり! 何百億年も前から飽き飽きして辟易してんだよ! 命令だぁあ! 俺の命令だぞぉお! 神の王であり、命の王である、この上なく尊い俺様の命令だぁああ! 歯向かってんじゃねぇ、殺すぞぉおお!」
と、まったく主人公とは思えない、まるで小物チンピラのような暴言を吐くセンに、
三至とカンツは、一ミリも揺らぎを見せずに対応する。
「「「「この上なく尊き王の盾になるために、我々は存在するのです。御身を斥侯に出すなど、ありえませぬ」」」」
一糸乱れぬ過保護の大合唱。
その鬱陶しさに対し、センは、
『思春期大爆発中の中学二年生』よりも過敏な反応を示す。
「ウザすぎんだよ、マジでぇええ! お前ら本当は俺のこと嫌いだろぉおお! だから、こんな、回りくどいいやがらせしてんだろぉおお? 見事な手腕だ、あっぱれだよぉ! ごくろぉさぁああん!」
などと、喚いていると、
また、タワーから、バグが湧いて出た。
今度は、存在値100億級が2000ほど。
だんだんと上がってきた脅威度。
しかし、今のセンにとって大事なことは、ソコじゃない。
だから、
「まだ、家族会議の途中でしょうがぁあ!」
情緒もクソもなく、サクっと、秒で、
『100億かける2000』という、
人類滅亡の脅威を消滅させる命の王。
「はぁ……はぁ……ったく、引っ込んでろ、ぼけがぁ」
と、吐き捨ててから、
配下たちに視線を向けて、
「はぁ……はぁ……いいから、動くなよ、お前ら……ほんと、マジで……はぁ……はぁ……」
と、軽く息を切らしているセンの様子に、
めざとい平が、
「師よ……お体をどうかされたのですか? あの程度の雑魚を屠るだけで息切れなど……まさか、御病気で――」
「ああ、違う、違う! お前らに対するイラ立ちから、エグい高血圧になっているから、それを深呼吸で整えているだけぇええ! 神の王が病気になんかなるか、ナメんな! 俺を誰だと思ってんだ! あのセンエースさんだぞ!」
そう言いながら、
むりやり、呼吸を抑え込むセン。
(……こいつらの前では、ちょっと呼吸を乱すこともできねぇのか、俺の神生……なんで、こんな、『クソ縛りゲー』みたいなコトになってんだ……ダルすぎるだろ……はぁあ……)
心の中で、深いため息をこぼす。
万全時のセンにとって『100億かける2000を屠る程度』は、超近所のコンビニに徒歩で買い物にいった程度の労力でしかない。
それで息をきらしている姿を見せられれば、センの実力を知っている配下からすれば、心配になって当然。
その『過保護』の精度が、イヤになるほど理解できているセンは、
以降、二度と、無様な姿は見せないようにしようと心にかたく誓う。
その『覚悟の総量』が相当なものである点から、
『どっちもどっち』の異常集団であることがうかがえる。
センは、ゼノリカの面々から向けられる『愛情』を『過保護』と吐き捨てるが、ゼノリカの面々からすれば、『センこそが、自分達に対して過保護すぎる』と本気で思っているし、それもまた事実である。
終わらない過保護のマウント合戦。
共依存のインファイト、
献身と自己犠牲の無限デンプシーロール。




