32話 さすがにブチギレ不可避。
32話 さすがにブチギレ不可避。
(足が重い……若干、集中力が切れてきた……ヒドいな、この体力消耗率……たかが存在値1億を、ちょっと屠っただけで、ここまで……あ、クラっとした………………うん、これは、やばいねぇ……やっぱ、ヨグを取り込んだのは、失敗だったかなぁ……)
もちろん、まだ動ける。
しかし、この異常な損耗率を前にして、
ここから先の地獄がリアルに想像できてしまい、
センは、『ヨグと契約しない方がよかったかなぁ』と臍を噛む。
ちなみに、この後悔は、本当に無意味。
仮に、今、ヨグと契約を交わしたあの時に戻ったとしても、センは、間違いなく、また、ヨグと契約を交わすから。
「陛下。聖典から読み取れるバグの性質を鑑みるに、敵の数は、ここからさらに増加する……と予想されます。よって、僭越ながら、陛下の単独斥侯という形ではなく、ゼノリカとして、軍として動くべきかと愚考します」
「まさに愚考。反省しろ、カンツ。お前は100%間違っている。ここは、俺単騎の突撃がベスト。何がどうとは言えんけど、とにかく、それが最善」
と、また、不毛な言い争いが続きそうになったところで、
「失礼いたします、師よ」
三至の三名がそろって瞬間移動してきて、
綺麗にそろって臣下の礼を見せる。
この場の代表として『平』が、
「謎のタワーとバグの処理は、どうか、我々にお任せを。決して、師単独で突撃など、なさいませぬよう、どうかお願い申し上げます」
平だけではなく、ゾメガとミシャも、同じお願いを口にする。
ゼノリカの中でも『センエースに対する過保護力』が最高クラスの三者。
カンツに、三至にと、
セン的にクソ面倒くさい配下たちの波状攻撃。
そこで、センは、
「うるせぇ。俺が行くから、お前ら待機。もうごちゃごちゃ言うな。これ、決定事項。早急に対処しないといけないっぽい事案を前にして、ダラダラと引き留めんな、鬱陶しい」
そう言って、さっさとタワーの対処に向かおうとするセンに対し、
三至は、サクっと『閃化』状態となり、それぞれに可能な特質性をフル稼働させて、
特殊な空間に囲いこむという形で、センが、この場から逃げられないようにする。
あまりにも迷いのない一手。
おそらく、最初から打ち合わせ済み。
センのことが、非常によくわかっている。
確定でリハーサルバッチリの洗練された無駄のない行動。
そのムーブに対して、センは、天を仰ぎ、
「めんどぉおおおい!」
と、心の底からの叫び声を上げる。
ぶっちゃけ、その気になれば、この程度の『空間』から抜け出すのは難しくない。
ただ、『それなりに体力を使ってしまう』というのが大問題。
『体力を温存した状態で逃げ出そう』と思えば、繊細な配慮をシカトする必要がある。
ようするには三至を傷つける必要がある。
だから、センは躊躇してしまう。
センエースという男は、あまりにも、家族に対して甘すぎる。
秒の中で、色々と悩んだ結果、
センは、
「もういいって、この不毛なやりとり! 何百億年も前から飽き飽きして辟易してんだよ!」
また、懲りずに、対話での平和的解決を望もうとする。
狂信者との過保護戦争において、対話などなんの意味もないのに。
「命令だぁあ! 俺の命令だぞぉお! 神の王であり、命の王である、この上なく尊い俺様の命令だぁああ! 歯向かってんじゃねぇ、殺すぞぉおお!」




