31話 センエースの体力。
31話 センエースの体力。
カンツとセンの無意味なにらみ合いが、1分ほど経過したところで、
「……ん……おっと、もうおかわりか……くるとは思っていたが……ずいぶんと、早ぇな」
奇妙なタワーのてっぺんから、また、バグが湧いて出てきた。
早々の復活。
その上で、
「おやおや、存在値も数も、かなり強化されてんじゃねぇか」
存在値は1億。
総数は1000以上。
「まさか、殺すたびに強化されますとか言わねぇだろうなぁ……」
不安げな顔でそうつぶやきつつ、
センは、またヨグソードを横に薙ぐ。
たかが1億×1000程度なら、
さすがに対処は余裕。
――ただ、
(……げっ……ウソだろ……もう、ちょっと疲れてきた……やべぇ……体力なさすぎだろ、今の俺……今の俺というか、ヨグソードという『ハンデ』を背負っている俺……)
プライマルコスモゾーンレリック『ヨグ=ソトース』の魂の『中』には、『真・第一アルファ(循環するエネルギーが枯渇している状態の膨大な世界)』が存在している。
現在、センエースは、その世界の循環のために、ずっと、エネルギーを供給し続けている状態にある。
一言で言えば『24時間365日ずっと全力でマラソンしている状態』である。
基本、満身創痍。
動けているだけで奇跡、というガチ極限状態。
(……1億程度なら、まあ、流石に、全然ヨユーだけど……こっから、バグの存在値と数が、バカみたいに跳ね上がっていって、俺とトントンの存在値とかになったら……流石に、キツいんだが……)
心の中では、未来に対する不安でいっぱいになっているセン。
しかし、隣にカンツがいるので、その焦燥や心配は、おくびにも出さない。
不敵な笑顔で、『道化』を演じるセン。
「まあ、仮に、ここから、バグの力と数が、指数関数的に強化されていったとしても、何の問題もねぇけどな。真・究極超神化7のレゾナンスに辿り着き、絶対的精神的支柱の恩恵を受けて、プライマルコスモゾーンレリックのヨグまで手に入れた俺に敵はいねぇ」
絶対的精神的支柱の恩恵。
その中の一つである、『狂気の信仰』と、『病的な献身』。
ゼノリカの神族とセンエースの中に発現した『この上なく尊き魂の系譜』に刻まれている、その二つのプラチナスペシャル。
効果は単純。
子(ゼノリカの神族)の信仰と献身が、そのまま親の力となる。
子の強さと、信仰の度合によって、上昇率は変動。
簡単に言えば、『高潔な強者』に愛されれば愛されるほど、センエースは強くなる。
――『常人ならば話を聞くだけでもドン引きしてゲロ吐くこと必至のイカれた努力』を積み重ね続けたことで会得したチートの数々は、本当に、どれもハンパじゃない。
それは事実。
事実なのだが、
――ヨグという『荷物』が、想像以上に重たかったというのも、また事実。
(足が重い……若干、集中力が切れてきた……ヒドいな、この体力消耗率……たかが存在値1億を、ちょっと屠っただけで、ここまで……あ、クラっとした………………うん、これは、やばいねぇ……やっぱ、ヨグを取り込んだのは、失敗だったかなぁ……)




