27話 始まった、何もかも。
27話 始まった、何もかも。
「どうだ、カンツ。ゼノリカの王にならないか? 世界の半分と言わず、全てをお前にやろう。この究極超神器だけではなく、俺がもっているものを、全部やる。『神界の深層を統べる暴君』という地位もやろうじゃないか。だから、センエースの布教みたいな仕事は、やめていただく方向で、ここは一つ、どうにか手を打っていただく方向で、なんとかなりませんかねぇ……」
と、最終手段であるところの『ピカピカの贈賄罪』をかまそうとする悪代官カドヒト。
いちいち言うまでもないことだが、
正義の化身にして、警察組織の頂点であるカンツに、
そんなものが通用するはずがない。
コトここに至っては、『通用するはずがない』どころの話ではなく、
カンツは、カドヒトの犯罪行為を、優雅なシャレとしか認識していない。
ゆえに、
「はっはっはっは!」
と、いつもの豪快な笑いで覇なく、上品な笑顔で、王のジョークに破顔する。
ちなみに、先ほどのカドヒトさんに、ジョークのつもりはいっさいなく、カンツが了承してくれるなら、ガチでワイロによる契約をかわそうとしていた!
どこが、病的な高潔だというのか!
こんなのが世界政府の頂点とは!
世も末である!
「さて、それでは、そろそろ仕事に戻らせていただきます。陛下から頂いた激励を胸に、これからも、猪突猛進・全身全霊の構えで邁進していく所存!」
と、センエースを布教していくことに、新たなる強い覚悟を固めている様子のカンツ。
天元突破した忠誠ゲージが、さらに、ワンランク上の領域に届く。
もはや大きすぎて概要が掴めなくなっているカンツの忠誠心。
その、『無敵の人』が過ぎる聞く耳ないモードを前にして、
さすがのカドヒトさんも、
「……終わった……何もかも……」
と、生気のない真っ白な顔でうなだれるばかり。
何度でも終わりを迎える!
彼の絶望に終焉はない!
――と、その時だった。
「ん?」
まず、最初に、カドヒトが、異質な気配に気づいた。
世界の何かが歪んでいく感覚。
長年、絶望と向き合い続けた者だからこそ磨かれたセンサーに反応。
続いて、カンツも、
「むっ?!」
と、何か、ただならぬ気配を感じて身をすくめた。
「……陛下……これは……いったい……」
「いや……分からんな……」
陛下と呼ばれて普通に返事をするカドヒトさん。
緊急事態に陥ると、あっさりと化けの皮がはがれてしまう。
「いかがいたしますか?」
「まずは、確認からだ」
軽く言葉を交わし合いつつ、
二人は、瞬間移動で外に出て、
気配の出所を探す。
すると、そんな二人の視界に、
『世界の異変』が飛び込んでくる。
ズゴゴゴゴゴゴっと、豪快な音をたてて、
三本ほど『歪で巨大なタワー』が生えてきた。
全長300メートル級。
東京タワーよりちょっと小さいぐらいの塔。
幸い、タワーが生えてきた場所は、荒野や砂漠などの、人がいない場所だったので、なんの被害も出ていないのだが、しかし……
「おいおい……ずいぶん、小粋にハシャぐじゃねぇか」
そのタワーのてっぺんから、
羽の生えたサソリみたいなモンスターが、うじゃうじゃと湧き出てきた。




