23話 狂信者の思想。
23話 狂信者の思想。
「まったく、由々しき事態ですなぁ。あくまでも一部とはいえ、いまだ、『陛下を理解しようとすること』を諦めて、『倫理の完成に対する努力』を放棄している連中がいるという大問題……より深く強く広く布教活動を実地し、そのような戯言をほざく輩を一掃したいと考えております」
「届いてる? ねぇ? 俺の言葉、ちゃんと耳に届いてる?」
呆れ顔で、しんどそうに、そう言葉を紡ぐカドヒトに、
カンツは、
「リフレクションは……この上なく尊き陛下が、『世界の裏側の問題』を処理するために設立なさった機関……かつ、『ゼノリカの理念に対するアンチテーゼを提唱する』ことで、たるみきったゼノリカ上層部に『高次の気づき』を与えることが目的の、いわば、監査的な機関」
淡々と、センの『真意』を並べていく。
「……その本質を鑑みるに、『陛下の尊さ』に対して『疑念をつきつける』のは、陛下が望む通りの行動であり、一部の者が常に『声を上げ続ける』というのも、『異次元の高潔さ』を何よりも重んじる陛下からすれば、必要悪なのでしょう。しかし、真実を知らないまま、『陛下など存在しない』という盲目的な勘違いのもと、やみくもに反旗を翻すのは誤った行動だとワシは考えまする」
カンツの信念はゆるぎない。
神を知らなかったときから、正義の化身として、倫理の完成を求め続けてきた男の『世界に対する忠誠』はハンパじゃない。
「――陛下は、自身に対する『過剰な崇拝』は不要と考えておられる。なぜならば、真の意味で『病的に高潔な御方』だから。『過剰に持ち上げられた者』は『歪んでしまう』――という、『命が有する弱さ』を深く理解し、その穢れを強く忌避しておられる」
それすなわち、『チャンピオン(君臨する者)』ではなく、永遠に『チャレンジャー(求道者)』であり続けるという覚悟。
キングでありながら、ナイトであり、ルークであり、ビショップでもある。
ふんぞり返るヒマなどない、とばかりに、常に命の最前線で、高潔に舞い続ける闘神。
そうでなければ守れないモノがありすぎると理解しているがゆえの慈悲深い努力。
人生の『あがり』というものを望まない異質な気概。
常軌を逸した魂魄のオーバーロード。
『人の弱さ』から目を背けず、
必死に、全力で、弛むことなく、
狂気の努力を積み続けるという信念の結晶。
――つまりは、弱き命に対する滅私の献身。
終わりのない信念の貢献。
「しかし、お認めください、陛下。何があろうと、陛下が揺らぐことはありえない」
カンツの中で、『センエース神帝陛下』という概念は、
天元突破をした命の完成形。
カンツが目指す理想の形。
永遠の指標。
絶対の道標。
「陛下の魂は、永久の輝きを放つ閃光の結晶。たとえ、世界中の全ての命から敬慕を注がれたとしても、何一つ緩むことなく、輝く明日に向けて、尋常ならざる研鑽を続けることでしょう」
ソレは、カンツの中では、一つの真理。
たどり着いた人生の答え。
センエースは、『完全な存在』『理想の個』『究極の光』であり、何があってもゆるぎない。
そんな完全なる存在を、絶対の道標として、すべての命が心に刻み込めば、
『今日よりもはるかに輝く明日』と共に在れるだろう。
――その思想は、カンツの中では、絶対の真理。
だからこそ、広めなければいけない。
センエースという王の偉大さを。
正確に、完全に、完璧に。




