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22話 リフレクションは……


 22話 リフレクションは……


「俺は、センエース布教対策委員会の代表としてここにいる。その前提をないがしろにして、テキトーな対応をすることは許さない」


「分かっておりますとも。――ワシも、この上なく偉大な王の権勢を世界にとどろかせる仕事を抱えておりまして、大変忙しいのです。休む間もない労働時間の中の隙間時間を、むりやり捻出して、這いずるように、何とかここにきた、ということをご理解いただきたく」


 カンツは、徹底的に臣下の態度を貫きつつも、

 しかし、信念には微塵も揺らぎがない。


 ありえない話だが、もし、主が『間違い』を犯したら、

 まっすぐな目で、それを是正しようと動くだろう。

 ――というか、主の間違いを是正しようとした結果が、センエースの大布教なのだが……


「リフレクションとして……『一部の民衆』の不安を取り除こうとする、その献身……相変わらずの、世界に対する深いいつくしみ……ワシの中で、陛下に対する敬慕と憧憬の念が際限なく膨らんでおりまする。少しでも陛下に近づくための努力を積みたいところですが、今は、まず、世界に陛下の威をとどろかせることが先決」


 なかなか会話にならないカンツに対し、

 センは、イラつきを募らせるが、


「……無駄な戯言はゴミ箱に投げ捨てて、建設的な話し合いを進めよう。最初に言っておくが、民衆は、昨今におけるゼノリカの狂い方に恐れをいだいている。……ここで、民衆の声を、少しだけ、代弁させてもらう」


 そこで、カドヒトは、資料の束を取り出して、


「――『センエースを過剰に推してくる行為は、明確な暴挙である』『今のゼノリカは、異常な狂信性により、暴走しているようにしか見えない』『なぜ、このような事態になってしまったのか、早期の解決を求む』『神を信じないというわけでもないが、ゼノリカが狂ったら、世界的にまずいから、一時的に、リフレクション側について、主義主張戦争を行い、どうにか、正気に戻ってもらいたい』――これが、民衆の声だ。いま述べたのは、あくまでもほんの一部。他にも、山ほど、不安の声が届いている」


 ゼノリカは、まごうことなき、世界の中枢。

 人間で言えば、脳や脊髄。

 大事な中心部分が異常に狂ってしまったら、パニックに陥るのは当然。


「一般民衆にとって、センエースは必要のない概念だ。突き詰めて言えば、『いてもいなくてもどうでもいい存在』なんだよ。そんな、特に必要のないものを『崇めろ、奉れ、尊敬しろ』なんて、過剰に押し付けられても、ただただ困惑するばかり。もっと直線的な言葉にすれば、極めてしんどい害悪行為。パワハラであり、モラハラ。吐き気を催すほどのいやがらせでしかない。その絶対的な事実を、いい加減、わかれ、カンツ・ソーヨーシ」


 カドヒトの言葉を受けて、

 カンツは、渋い顔で、何度か頷き、


「まったく、由々しき事態ですなぁ。あくまでも一部とはいえ、いまだ、『陛下を理解しようとすること』を諦めて、『倫理の完成に対する努力』を放棄している連中がいるという大問題……より深く強く広く布教活動を実地し、そのような戯言をほざく輩を一掃したいと考えております」


「届いてる? ねぇ? 俺の言葉、ちゃんと耳に届いてる?」



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