17話 オワタ!
17話 オワタ!
「俺なんかは、別に偉いわけでも高貴な血統ってわけでもないんだから、テキトーに、『ちょっと使える最終兵器』くらいに考えておけ。やべぇ敵が湧いた時は、それなりに必死に戦ってやるから、それで勘弁してくれ、マジで! もう、しんどいんだよ、偉い神様のフリをするのも! 別に『ナメられまくったゴミになりたい』とは思っていないが、『無駄に崇拝される』とかも、同じぐらいダルいんだよ。分かれ!」
「確かに、分不相応な、過剰すぎる崇拝は、鬱陶しいだけですなぁ」
と、カンツは、センの言葉に同意する。
「分かってくれたか、カンツさん! お前なら、きっとわかってくれると信じていたぞ! お前は、ゼノリカの中でも、実は、一番の常識人! 奇抜な豪快さを演じてはいるが、腹の底では、誰よりもスマートに世界を見ている! サトロワスとお前は、ゼノリカの良心! きっと、『センエースなんか、実際のところ、しょうもないクソガキ』というただの事実を正確に把握してくれると――」
「――しかし、『喝采と賛美が足りなさすぎる』のも問題だと考えまする、陛下」
「ん?!」
「王には王の待遇をすべき。パメラノがよく言っておりますが、政治や組織の中における社会規範は、『ごっこ遊び』では務まらんのです」
「……」
「陛下が、かつて、第一アルファで、たんなる一般人であったこと、そして、才能という点では凡夫であること――その二点に関しては、まあ、理解できましたが、しかし、それがなんだというのです? むしろ、産まれた瞬間から王族や英傑だった者よりも、多くの挫折を知っている分、信用度は高いとワシは考えます。才能がないのに、誰よりも高い場所に届いた、その根性と努力は、ただの天才では永遠に届けない場所だと思いまする。無限にして孤高の高みを目指す滅私の求道者――王として、理想の状態、皆が望むヒーロー像を、完全に体現した御方。あなた以外に、ゼノリカの王は務まりますまい。ヒーローとして、ワシが必要だと思う要素の全てを満たしている稀有な御方。……世界のため、弱い命のため、必死になって、誰よりも苦しみながら、それでも、勇気を叫び続けた信念の化身。仮に、多少の人間的なマイナス要素があったとしても、そんなもので陰るほど、あなた様の尊さは脆くない。このワシですら傅かずにはいられない『遥かなる高潔さ』を有している御方。それが、あなた様です。センエース神帝陛下」
そこで、カンツは、遠い目をして、
「……かつてのワシは……『もし、仮に、万が一、センエースなる存在が実在したとしても……多少は、ダメな部分もあるだろう』……と、考えておりました。おろかで……若かった。理想のヒーローを目指して、邁進しておりましたが……しかし、どこかで、まだ、理想に陰りがあった。理想を求め切れていなかった。そんな若輩者のワシに、主は……王は……本物のヒーローは……『完全なる理想の姿』を魅せつけてくださった……」
そこで、カンツは、また片膝をついて、
「産まれてきてくださったことに感謝を……存在してくれていることに感謝を……センエース神帝陛下……あなた様こそが、真なる最果て。この上なく尊き命の支配者」
カンツの言葉を聞いたセンは、
天を仰いで、
「……ダメだ……終わった……」
青い顔で、そうつぶやくことしか出来なかった。




