16話 センエースという陰キャのスペック。
16話 センエースという陰キャのスペック。
「儀礼だの、伝統だの、マナーだの……そんなもんは、俺以外の神にやればいい。俺にはいらん。俺はただの、どこにでもいる、元平均的一般男子高校生の転生者にすぎん!」
「それは無理がありまする」
「ねぇよ。なんも。無理なんて。だって、ただの事実だもん!」
自分を慕っている配下の前では、それなりに神の威光を魅せつけるセンだが、しかし、核に触れられて、中身がモロバレの相手に対して、いつまでもカッコつけるほど、センさんも奇特な人間ではない。
いや、まあ、だいぶ奇特な人間ではあるのだが、壊れてはいない。
いや、まあ、壊れてはいるが――
「いろいろと、なんだかんだ、すったもんだあったこの際だから、もう、『良い転換の機会』だと認識させてもらい、おれたちの、このゆがんだ関係性を、いったんフラットにしたい、と俺なんかは考えさせてもらっている!」
目覚めてからのセンエースは、ずっと、あれこれ考えていた。
これまでのように、『高みに至った神』の演技を続けるか否か。
目覚める前の『ウムルとの闘い』で、もうすでに、センの『中身』は、完全にバレてしまっている。
センからすれば『実家の子供部屋を隅々まで探索されてしまった』ぐらいの感覚。
これまでは、どうにか、『上司』の体裁を取り繕ってきたが、
『実家の子供部屋』を余すことなく覗かれてしまった以上、
もはや、その体裁に意味はないと悟ったセン。
ゆえに、もう、『ただのゴミ1』として、これはから、ゼノリカと接していきたい、と自然に考えたセンさん。
「あの時、コスモゾーンに触れた際、お前らは、俺の中身を知っただろう? 『嫌がらせの向こう側にある美化をされまくった聖典』のせいで、お前らは、センエースという男を、変に誤解していたふしがあったが、しかし、実際のところは、ただのモテないクソガキだということが判明してしまった。俺なんかは、しょせん、存在値が高いだけで、そこをのぞけば、元一般人の中の『中の下』に属していた凡夫。カスみたいな学校で、ちょっとマシな成績をとって喜んでいただけの小物。基本的に、才能というものがまったくない、初期ステゴミのスカンピン。ガチャで言えば、『こいつ、何体出てくんだよ、勘弁してくれ、殺すぞ』と真剣な殺意を抱かれる、コモンの中のハズレ枠。かつ、永遠の厨二病患者で、純粋ボッチで、まさかの万年童貞を超えた億年童貞という、成人男性として終わっている、ただの超絶チー牛クソ陰キャ」
その叫びに関しては、『自己評価が低い』とかではなく、単純な事実。
まごうことなき、センエースの真実。
「俺なんかは、別に偉いわけでも高貴な血統ってわけでもないんだから、テキトーに、『ちょっと使える最終兵器』くらいに考えておけ。やべぇ敵が湧いた時は、それなりに必死に戦ってやるから、それで勘弁してくれ、マジで! もう、しんどいんだよ、偉い神様のフリをするのも! 別に『ナメられまくったゴミになりたい』とは思っていないが、『無駄に崇拝される』とかも、同じぐらいダルいんだよ。分かれ!」




