13話 センエースの何をどう伝えていくか。
13話 センエースの何をどう伝えていくか。
「自分達の神を正しく知らないなど大罪!! 王の尊さを、正しく、民衆に理解させなければいけない! それこそが、最優先事項であり、それ以外のことは、いったん、どうでもいい!!」
ハッキリと暴走するカンツ。
こういう暴走を『止める者』がいて、初めて、組織形態とは意味をなす。
だが、ここにいるのは、全員が、『センエースの愛に触れた者』。
つまり、カンツの行動を、暴走だと捉える者は一人もいない。
みな、カンツの強引な提案を『当たり前の意見』だと認識している。
なんだったら『足りないからもっと叫べ』と思っている者が大半という始末。
ここにいる皆の耳には、カンツの言葉が、『福祉に関して、為政者が考えるのは、当然のこと』ぐらいにしか聞こえていない。
当たり前のことを言っているという認識。
そんなことは、声高に叫ぶ必要すらなく、呼吸をするように努めなければいけないこと――という認識でいる者までいる始末。
ここで問題になってくるのは、どのような方法で、何を伝えるべきかという話し合い。
センエースの愛を、世界に周知させるというのは、『当然の事』として可決されたわけだが、その具体的な方法に関する話し合いで、会議は踊ることになる。
ここにいるのは、ゼノリカの中でも、上位に位置する者たち。
高い存在値を持つ者は、強い性格的個性を持つ者が大半。
みな、センエースに対する愛の総量は『爆裂に高い』ということで一致しているのだが、しかし、『どのような方向性』に向かっているかという点においては、それぞれ、過剰なほど個性が出てしまっている。
『センエース神帝陛下の美しさを解くべきである』
『センエース神帝陛下の強さを解くべきである』
『センエース神帝陛下の優しさを解くべきである』
『センエース神帝陛下の尊さを解くべきである』
『その全てを周知させるべきである』
『全てを周知させるのは当然のこと。しかし、問題なのは、その順番である。何を最も偉大な点として理解させるか』
『何も知らない民衆に、センエース神帝陛下の全てを、いきなりインプットさせるのは難しい』
『現実的にかんがえるのであれば、段階を踏んで伝えていくべき』
『その一段階目は非常に重要であると考える』
『となれば、何をメインに、センエース神帝陛下の魅力を伝えていくか』
センエース神帝陛下の何を民衆に推していくか。
その議論の熱が、いつまでたってもひかない議場。
『えげつない狂信者』の視点で、センエースの布教を始めようと画策するゼノリカの上層部。
第二~第九アルファという、強大かつ広大な世界の中枢――政治のど真ん中に位置する面々が、だいぶ、ヤバい熱暴走を起こしているという現実。
『センエースを知ること』が、『この世界で生きる者』の『最低限おさえておかなければいけない教養』であると熱く議論が交わされ、その感情論に対して、反対意見が一切出てこないというラリった鉄火場。
議論の方向性は固まっているが、濃いメンバーばかりなので、それぞれが、固有の熱い想いを胸に抱いており、それらの想い全てを完璧に結束させるのはむずかしい。




