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11話 主の美しさを文字だけでつたえるのは不可能。主の尊さは、そういう次元におさまってはおられない。


 11話 主の美しさを文字だけでつたえるのは不可能。主の尊さは、そういう次元におさまってはおられない。


「民衆の中でも、神帝陛下を狂信的に信仰している者はおります。しかし、それは、あくまでも、想像上の神を信仰しているだけ。それではダメだと、僕は考えます。――聖典に書かれている内容を盲目的に信じているだけ。たったそれだけで、神を『理解している気になっている』のも腹立たしい」


 アモンの言葉に、議場にいる『実際にセンエースを知る者たち』は、何度も首を縦に振る。


「今、この場には、聖典の制作にかかわった諸先輩方もおられますので、あまり、こんなことは言いたくありませんが、しかし、この場では、あえて言わせていただきたい。これは、あまりにも出来が悪い」


 そう言いながら、アモンは、演壇の上に、聖典をソっと投げ捨てる。

 本来の心境としては、思い切りたたきつけたいところ。

 しかし、いくら出来が悪いからといって、粗末に扱ってよいものではない、という配慮の表れ。

 今、アモンの中では、複雑な感情が渦巻いている。


「神の表面的な部分だけをなぞっているだけ。これでは、民衆が神を信じられないのも無理からぬ話――とまでは言いませんが、これで、全てを理解しろというのは、酷な話だとは思います」


 と、そこで、

 事前の決定事項通り、

 議場の最前列の席に腰かけている、九華の第二席である『パメラノ』が、スっと手を挙げた。


 議長であるカンツは、淀みなく、パメラノに、発言を促す。

 パメラノは、ソっと立ち上がり、


「聖典の作成にかかわった一人として、この場で、正式に謝罪させていただきたい。聖典の出来が悪いという指摘に対しては反論の余地がない。主の尊さをまったく表現しきれなかった己の質の低さには、ほとほと呆れるばかり。――だが、これだけは分かってほしい。主の美しさを文字だけでつたえるのは不可能。主の尊さは、そういう次元におさまってはおられない」


 その発言に対し、アモンが、


「もちろん、理解しております、パメラノ猊下。主の輝きを、文字だけで伝えるのは難しい。だけれど、難しいからといって、両手を上げるべきではないと考えます」


 そこで、コホンと、小さなセキを一つはさんで、


「ここで、あらためて、今回の議題を述べさせていただきます。それはすなわち、『世界が、この上なく尊き命の王センエース神帝陛下を誤解している問題の早期解決』であります」


 その流れに続くように、

 議長であるカンツが、


「今回の議題に対し、何か不満や反対意見のあるものは?」


 そう問いかけるが、当然、誰も何も言わない。

 この場にいるのは、イカれた狂信者だけ。


「それでは、会議を進めていこう。まず、ワシの意見も述べておく。アモンの言う通り、民衆は、陛下を知らなさすぎる」


 カンツは、ここまで、議長として、節度のある態度を貫いてきたが、

 しかし、ここで、


「……大問題だぁあああああああ!!!」


 と、叫びながら、演壇を拳で、

 ドゴォオオンッッ!

 と、コナゴナにしていく。


 先ほど、アモンに『演壇を壊すな』と言ったことなどスッカリ忘れているようで、

 カンツは、コナゴナになった演壇を足で踏み砕きながら、


「これまで、ずっと放置されていたことが信じられんほどの超絶大問題である!! ありえん! ありえぇええええええええんっっ!!!!!」




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