10話 アモンの熱量。
10話 アモンの熱量。
「僕は、コスモゾーンに触れ、陛下の芯を知った! 陛下は、我々を生かすためであれば、完全なる死をも享受するという、本物の覚悟を掲げておられた! 命に対する、その大いなる献身は! まさに、『すべての命の頂点』! 陛下の存在を疑うことはおろか、もはや、陛下が、『この上なく尊き命の王であること』を疑う余地すらない! 陛下こそが至上! 最上の神! 並ぶ者が存在しない、絶対の頂点! だが、その事実を! その現実を! その摂理を! 世界は知らないっっ!!」
勢いあまって、演壇をガツンとぶん殴るアモン。
この会議室にあるすべての調度品は、天上のアイテム技師たちが創り上げた逸品であり、今回の会議が始まる前に、アップデートも行われているため、アモンの一撃程度で壊れたりはしない。
「許されない! 『自分たちを愛してくれている神』が『実在するかどうか』すらも分かっていないなど! ありえない!!」
感情をむき出しにして、世界の不条理を叫ぶアモン。
いったん、そこで、
「すぅ……はぁ……すぅ……はぁ……」
丁寧な深呼吸を挟んでから、
「……お恥ずかしい話ですが……私も……あの日まで、神を信じておりませんでした……その大きな恥があるがゆえに、大半の民衆の『現状』が正しく認識できております。一般民衆は……神を知らない。存在を疑っている。……いや、疑っているという次元ではない……とんでもなく不敬な話ではありますが……一般民衆は……神のことを、『幼稚な妄想』と揶揄している始末」
グググっと、拳に力が入る。
「そんなふざけた話が、あってたまるかぁああああ!」
膨大に膨れ上がったオーラが一気に濃縮されて、
アモンの拳を凶悪な兵器へと変える。
爆裂に火力が底上げされた拳が叩き込まれたことにより、
演壇は真っ二つに割れてしまった。
それを見たカンツが、ボソっと、
「おお、ワシの魔力でコーティングした演壇を叩きつぶしたか。いい怒りだな、アモン。なかなかの胆力だ」
そう言いながら、即時、魔法で演壇を修復する。
カンツは、メインアタッカーを担うことが多い前衛だが、
それ以外の何でも『最高位級』に出来てしまう超万能ド天才であるため、
アイテム技師としても、ゼノリカに大きく貢献している。
「しかし、いちいち、修復するのも面倒だから、二度と壊すな。いいな」
「は、はっ……申し訳ありませんでした、カンツ猊下」
カンツに対し、正式に頭を下げてから、
アモンは、議場の諸先輩方に顔を向け直し、
「民衆の中でも、神帝陛下を狂信的に信仰している者はおります。しかし、それは、あくまでも、想像上の神を信仰しているだけ。それではダメだと、僕は考えます」
アモンは、つらつらと、事前に決めておいた内容をそらんじていく。
「聖典に書かれている内容を盲目的に信じているだけ。たったそれだけで、神を『理解している気になっている』のも腹立たしい」
アモンの言葉に、議場にいる『実際にセンエースを知る者たち』は、何度も首を縦に振る。




