9話 この上なく尊き命の王、センエース神帝陛下の偉業を、全世界に、正しく伝えるべき! その行動に対し、当の神がどう思うか? 知らぁあああん!!
9話 この上なく尊き命の王、センエース神帝陛下の偉業を、全世界に、正しく伝えるべき! その行動に対し、当の神がどう思うか? 知らぁあああん!!
「アモン! 演壇に上がり、今回の議題を叫べ!」
「はっ!」
命じられたアモンは、10歳前後の子供とは思えない丁寧な所作で演壇へと上がっていく。
進行上の、いくつかの様式は排除しているが、しかし、最低限の流れは守る様子。
ここで、アモンが演壇に上がり、議題を並べることに関しては事前に決まっていた。
だいぶ、簡略はしてきているが、しかし、最低限の『会議のための会議』はやってきているのである。
演壇に上がったアモンは、
一度、小さくセキをしてから、
議場の面々、諸先輩方に向かって、
まっすぐに、胸を張って、堂々と、
「世界は、神を知らない」
と、事前に叩き込まれた内容をそらんじていく。
「あってはならないことだ」
定められた文章を並べているだけ――だが、
『そこに込められている想い』は本物。
決して、ただ、音読しているだけではない。
だから、声には熱が帯びる。
感情がむき出しになる。
表情一つとっても、本気であると理解できる狂信の覇気。
「この上なく尊き命の王、センエース神帝陛下の偉業を、全世界に、正しく伝えるべきだと僕は思う!」
そう叫びながら、アモンは、『聖典』を取り出して、
「ここに書かれていることは、あまりにも、薄っぺらい! こんなものではない! こんなものではないのだ! 神の偉業は! その尊さは!」
熱が加速する。
想いが暴走する。
「僕は見た! 感じた! 命を与えてもらった! 僕の魂の中には、陛下の命の一部が刻み込まれている! ほかの誰に、同じマネができるであろう! 何十億年、何百億年という年月をかけて、弱い命を守るために武を磨き続けることが! その磨き上げた命を盾にして、世界を守り続けるという献身が! ほかの誰にできるだろう! 不可能!」
事前に決まった演説ではあるが、
しかし、間違いなく、ただの言葉ではなかった。
誰が耳にしたとしても、アモンの言葉を、想いを、空っぽのハリボテだと思うものはいないだろう。
「あまつさえ、陛下は! その全てをなげうって、我々に命を奉げてくれた! 陛下を死なせるわけにはいかないと、我々は、一致団結し、陛下に命をお返しした! だからこそ、陛下は生きておいでだが、もし、我々の覚悟と力が足りなければ、陛下は、あのままお亡くなりになっていた! 僕は、コスモゾーンに触れ、陛下の芯を知った! 陛下は、我々を生かすためであれば、完全なる死をも享受するという、本物の覚悟を掲げておられた! 命に対する、その大いなる献身は! まさに、『すべての命の頂点』! 陛下の存在を疑うことはおろか、もはや、陛下が、『この上なく尊き命の王であること』を疑う余地すらない! 陛下こそが至上! 最上の神! 並ぶ者が存在しない、絶対の頂点! だが、その事実を! その現実を! その摂理を! 世界は知らないっっ!!」
勢いあまって、演壇をガツンとぶん殴るアモン。




