30話 トゥルーエンド?
30話 トゥルーエンド?
ベッドから起き上がり、窓を開けて世界を見渡した。
そこには、見慣れた世界が広がっている。
「……綺麗な空だ……」
雲一つない、磨き抜かれた蒼穹が世界を包み込んでいる。
とことん美しく、蒼く、碧く。
(随分、長い間……絶望と向き合ってきた……)
寝ぼけているのか、まだ、ところどころ、曖昧な部分もあるが、
辛く苦しかったという『感情記憶』だけは鮮明に刻まれていた。
(しんどかったなぁ……何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も死にかけて……けど、俺は全部を乗り越えた……自分が守りたいと思うものは、全部守ってきたんだ……)
上を見れば綺麗な空、
下を見れば、人々が街を行き交い、『今日』を生きている。
(俺は……守り切ったんだ……)
全部を見渡して、感慨にふける。
これまで、散々、死ぬほど苦しんできたが、
しかし、センは、
(俺は、ついにゴールにたどりついた。トゥルーエンド……『限界のない世界の実現』と、鬱陶しい外敵を全て排除した『完璧な世界の平定』……)
マラソンを走り切った後の爽快な達成感に包まれている。
『ゴールテープを切った』という強い『実感』に『支配』される。
その途中で、ふと、
(……ゴール……か? ここ、ゴールか? ……ゴールか……そうか……うん、そうだな……)
疑念を抱きそうになったが、
まるで、『とんでもなく強い強制力に引っ張られた』みたいに、
センは、『自分はゴールにたどり着いた』という感情に飲み込まれていく。
(何かを……忘れているような……なんだっけ……いや……何も忘れちゃいないか……)
『何かを忘れている気がする』とか『初めてくる場所なのに、なんか覚えがある』みたいな、脳の誤作動は、人間にとって珍しいことではない。
神になって以降も、センは、『人間としての脳の本質』は、ほとんどなくしていない。
だから、今回の、『何か忘れている気がする』という『引っかかり』に対して、いつもの脳のバグだろうと処理していく。
(俺は……達成したんだ。ラスボスを倒した)
頭の中に刻まれている『本物の記憶』を頼りに、『今』と向き合うセンエース。
(……もう、世界は大丈夫。アホな脅威にさらされることはない。今後、またアホな脅威が現れても大丈夫。ゼノリカは強くなった。あとの『世界の面倒事』に関しては、ゼノリカに全部丸投げしておけばいい。昔は、シューリに全投げするしかなかったが……今は、天上全員が、そこそこ頼りになる。あいつらも、多くの絶望を乗り越えて、破格の力を手に入れた)
ゼノリカが手に入れた力の中でも、特にブッチギリでエグいのは、
センの『覚醒・絶対的精神的支柱』の恩恵。
一番のチートは、その恩恵によって得られる『センエース化』という名の変身チート。
神化できるし、現世で神の力を使えるし、普通に超絶パワーアップするし、無数のプラチナスペシャルが目覚めるし、なにより、センが積み重ねてきた『GODポイント』の1%が使えたりもする。
何より破格なのが、最後に並べた『センエースが獲得したGODポイントの1%を会得』というもの。
とにかく破格。
えゲつない恩恵。




