29話 第二アルファ。
29話 第二アルファ。
「……ん?」
目が覚めた時、
センの視界には、見知らぬ天井が広がっていた。
荘厳な『無数のシャンデリア』が並ぶ。
周囲を見渡すと、クソ広い豪華な部屋。
バカみたいにでかい、高級感で一杯のベッド。
(え、どこ……ん……あれ? なんじゃい? どういう状況? どういう……)
目が覚めた瞬間は、
頭の中が真っ白で、何も分からなかったが、
しかし、徐々に、
(……銀の鍵地獄のゼノ・セレナーデを経て、レゾナンスに覚醒して……ウムルのいやがらせで、絶対的精神的支柱が、なんか進化して……で、俺のことをナメ散らかしていたヨグを倒して……その結果、プライマルコスモゾーンレリックのヨグソードを入手して……それで……それで……どうなったんだっけ……)
徐々に、これまでのクロニクルを思い出してきたけれど、
ところどころ、エピソードが曖昧で、フワフワしていた。
(それで……ああ、そうか……『真・第一アルファ』から、戻ってきたんだ……俺のホームに……この……『第二アルファ』に……)
記憶が整理されていく。
しかし、整理された分だけ、不透明になる部分も徐々に出てきて、
(……『真・第一アルファ』へは……どうやって行ったんだっけ?)
まるで、『つぎはぎ』されているかのような記憶。
夢の中にいるみたいに、『足りない記憶』に対する感情が薄れていく。
(……ああ、そうか……なんか、扉が出てきて……鍵は、何を使ったんだっけ……鍵なんて……なかった? あ、そうか……なかったか……)
整合性があるようで、ないようで、あるようで、ないようで、
そんなフワフワした状態だが、そもそも記憶力が抜群というわけでもないので、
『どうでもいい記憶が薄れただけだろう』と、現状を甘くみるセン。
『原初の世界に関する基本情報』がゴッソリ抜け落ちているのに、
『原初の世界で経験した記憶だけ』は、枝葉として、断片的に残っている。
枝葉の元をたどろうとすると、不自然な曖昧さに包まれるものの、
しかし、何十回も転生しているセンにとって、
『どの記憶が、どの世界でのものか』なんて、些細なこと。
そんな前提が、『原初の世界』に対する記憶の曖昧さを補強してしまう。
『そんなものか』と、テキトーな処理をしてしまう。
まるで、現実と夢とが重なり合う歪んだはざま。
「……ん……」
ベッドから起き上がり、窓を開けて世界を見渡した。
そこには、見慣れた世界が広がっている。
ずいぶん永いこと時間の旅をしてきたので、重たい懐かしさを覚えた。
グっと、心臓にのしかかってくる。
一瞬だけ泣きそうになったが、流石にそれは自重した。
「……綺麗な空だ……」
雲一つない、磨き抜かれた蒼穹が世界を包み込んでいる。
とことん美しく、蒼く、碧く。
センにとって、ここは、とても大事な世界。
『ゼノリカ(センエースが理想とする組織)』の支配下にある第二~第九アルファ。
ぶっちゃけ、『17年程度しか生きていなかった上、センのヘイトしか買っていない故郷』の『第一アルファ』なんかよりも、過ごしてきた実質時間でいっても、本質的な愛着でいっても、こっちの方がはるかに上。
比べるのもおこがましいレベル。
チン○スとダイヤモンドの差。




