28話 真なる原初の世界。
28話 真なる原初の世界。
「………………俺の中にいる……女の子たちには……手を出すな……」
まっすぐな言葉で牽制を入れていく。取り繕うことも、照れ隠しをすることもない。
そんな余裕はない。面倒くさいからと口を紡ぐことも、この時ばかりはありえない。
超苺の言葉を受けて、
カミノは、
「わざわざ、虎の尾を踏む気はない。お前の中の女を狙えば、おそらく、お前の覚悟が覚醒する。女どもは、決死の覚悟で自分たちを守るお前に、より心酔し、それは、力となって、お前に宿る……俺からすれば、最悪のスパイラル。そんな循環をわざわざ発動させてやるほど、俺は酔狂じゃない」
わずかも油断はない姿勢。
無崎の因子が覚醒することに対し、カミノは普通にビビリ散らしている。
『恐れている』とか、そんなレベルではなく、文字通り、気を抜けばションベンちびりそうになるほど、ガチガチにビビっているのだ。
『自分が最強ではない』という強い自覚は、カミノが有する強大な武器の一つ。
カミノには、『油断』も『慢心』も『不遜』も『自惚れ』もない。
――『夢やぶれた男』という肩書きが、強固な器になっている。
これは、『順調な人生を歩んできた天才』では永遠に得られない宝物。
無崎ほどではないが、紙野もちゃんとしっかりした化け物なのである。
「超苺……今のところ、俺は、お前よりも強いが、潜在能力だけで言えば、『無崎』を抱えているお前の方が上なんだ。お前を『起こすようなマネ』はしない。このまま、セイラの中に閉じ込めて、セイラの守護霊として、セイラを頑丈にしていてもらう」
「……」
「クロートもそうだ。あいつを守護霊的に飼っていれば、トコの耐久力が底上げされる。お前らは盾。俺の大事なものを守るための鎧。壊れたら取り換えるが、壊れるまでは大事に扱ってやるさ」
「……」
「最終的には、トコとセイラ、そして、俺の因子を奪い取って、全部、ヌルにぶち込む予定だったようだが……お前ら、さすがに、ヨミが浅すぎるぞ。ヌル本人がくるならともかく……もしくは、センエースをちゃんと目覚めさせてからならともかく……俺を『当て馬』や『かませ犬』にしようなんて、さすがにナメすぎ。元主人公として、頑張って、『真なる原初の世界』の下地を支えてきた俺に対する敬意が足りない」
そう言ってから、
カミノは、超苺の額に手をあてた。
淡い光が、超苺の全てを包み込んでいく。
決して『敵意がある光』ではない。
カミノは、宣言通り、『超苺の中に避難している何十億もの女性』たちには一切手を出さない。
だから、超苺は目覚めない。
――カミノは、慎重に、ことをはこんでいく。
頭の悪い悪役みたいに、愚かしさに溺れたりしない。
あくまでも慎重に、臆病に、丁寧に、ことを運んでいく。
だから、みのる。
カミノの構成通りに、世界が運んでいく。
クロートと、超苺は、トコとセイラの中に閉じ込められ、
もはや、勝手に出てくることは不可能な状態となった。
「さて……それじゃ、ヌルを封印しにいくか……そのあとで、『新世界1』を監視して、センエースが無駄に暴れないように調整……これで、『敵』はいなくなる。あとは、ジックリと時間をかけて、ニコトピアを復活させる」
自分のミッションを再確認したカミノは、
「仕事が多いなぁ……内容もハードだし……けど、まあ、しかたねぇ。これが俺の選んだ道だ……」
最後にボソっとそう言ってから、
最初の仕事――ヌルの封印へと向かった。




