26話 すべてうまくいく。
26話 すべてうまくいく。
――覚醒したカミノはキレッキレで、
その精度は、クロートごときに対応できる器ではなかった。
「ぐっ!」
無詠唱かつ、設置型で仕込まれていたEZZパニッシャーに捕縛されるクロート。
ほとんど何もできないまま、あっさりとノックアウトをくらう。
EZZパニッシャーは、ブッパで放った場合、サクっと対処されることがほとんどだが、正しい運用をした場合、『初代ポケ○ンのまきつく』ばりの、非常に凶悪な魔法。
流れを断ち切ることなく、
カミノは、超苺をにらみつけて、
「――『ヌルの配下』の中で怖いのは、お前だけだ。超苺。お前の中にも、元主人公の因子はある。プライマルメモリの主人公の中でも、特に凶悪な性質を誇る『無崎』の因子……隠れプラス・プライマル・プラチナスペシャル『すべてうまくいく』……本来、その力は、スーパーチートで、誰も敵わない無敵の力」
隠れプラス・プライマル・プラチナスペシャル『すべてうまくいく』――その効果は、極めて単純。スペシャルホルダーの意志に関係なく、『すべての言動』が、『自身と、所属しているコミュニティにとって、最良の最適解』になる。
「……しかし、元主人公の闇鍋状態になっている『この世界』においては、同等、もしくはそれ以上のチートを持つ者が他にもいる。俺もその一人だ」
そう言ってから、カミノは、
「下、上、右、左、セレクト、スタート、セレクト、スタート、ビー、0037564」
デバッグコマンドを入力して、
「――『すべてうまくいく』を搭載!」
破格のチートを自分に積んでいく。
固有神化の覚醒によって、大幅にメモリが増えたことで、
『イカれた容量を食うチート』でも問題なく詰め込むことができるようになった。
まさに無敵。
絶対なる神の領域。
「お前が有する『すべてうまくいく』も相当にエグいランクの『PPP』だが、俺の『原初のイタズラ』の方が上なんだよ、圧倒的になぁ」
――嘘である。
完全なるブラフ。
確かに、汎用性は優れている。
『原初のイタズラ』は、非常に有能な能力。
しかし、ポケ○ンで例えるなら『ミ○ウ』みたいなもの。
すべての技を覚えることはできるが、種族値オール100。
全てにおいて高性能で、汎用性やカスタム製には優れているが、実のところ『突出』はしていないのである。
それが、『原初のイタズラ』の弱点。
原初のイタズラで『高性能のスペシャルや魔法やグリムアーツ』を自分に搭載することは可能。
ウルトラバグレベルのチート。
しかし、廃人ガチ勢がしのぎを削り合っている最上位帯での闘いで、『種族値100水準のタイプ不一致技』は、さほど怖くない。
削り切れない。
届かない。
スピードが、パワーが、芯が足りない。
『汎用性』は、便利な概念だが、
常に『決定打にかける』という弱みを抱えている。
――そのことを、カミノは、重々承知している。
カミノの最大の武器は『原初のイタズラ』ではなく、
自分というコマを盤上で完璧に躍らせることができる『人外の棋力』にある。
この特質は、実のところ、超苺を底上げしている因子であるところの『無崎』も同じ。
『すべてうまくいく』は、けっして、無崎の『最大の武器』ではない。
あくまでも、『無崎』という化け物が誇る怪物性の一部でしかない。
そして『超苺』は、『無崎の怪物性』の全てを引き出せるわけではない。
あくまでも、『すべてうまくいく』が搭載されているだけ。




