24話 こだわりのリメイク。
24話 こだわりのリメイク。
「だから、俺は、強制的な『半ハッピーエンド』をくれてあげたってわけ。別に、全部を取り戻せなくても、フラグメントはちゃんとあるんだから、『そいつ』は『そいつ』たりうる。フラグメントを有していながら、まだ足りないなんて、そんなワガママ……いや、別に、こだわりを持つのは別にいいんだ。いいんだけど、そんな、『どうでもいいこだわり』に、他人を巻き込むなよって話。こだわりを持ちたいなら、一人でやってくれって話だ。それなら誰も文句は言わないから」
1000億年も付き合わされて、たまりにたまった不満を吐露してから、
「確かに、『ヌルに奪われた全部』は取り戻せていない。それは事実だよ。けど、大事なものは、あらかたそろえた。あとは、あいつが、その事実を認めれば、それで、ちゃんとトゥルーエンドになる。残っている問題は、あいつの感情だけの話。だから、俺は、あいつの感情が見たされるよう、『あいつの理想』通りになるように『新世界1』をチューニングした」
「……ふむ……なるほど……」
「ニャルラトホテプがやったような、『俺がシャツって言ったらシャツなんだよ』を軸にした『ただの夢・妄想・現実逃避』を見せているわけじゃない。ちゃんと、手間暇をかけて、フラグメントを回収して、『本当の本物』を創りなおして、プレゼントしてあげたんだ。未完成品であることは事実だが、ここから本物以上に仕上げていけばいいだけの話
ここまでしてあげたことに感謝されることはあっても、文句を言われる筋合いはないよ」
「しかし……」
「ん?」
「ヌルとやらはどうするんじゃ? また、そいつが暴れて、新世界1を食べてしまったら、堂々巡りにならんか? というか、世界2と3も大丈夫なのか?」
「ヌルは俺が閉じ込める。あいつは、今、『認知の領域外の領域外』で『真の究極超神化8』を求めて奮闘している。簡単に言えば、『バグったソウルゲート』的なところで修行しているってわけ」
「それ、ヤバくないか? 『1000億年頑張れるヤツ』の因子を持った化け物が、さらに自分を磨いとるって……それ……」
「なにもヤバくない。確かに、完成したヌルはヤバいかもしれないけど、そんな化け物と戦う気はない」
「それは、どういう?」
「簡単な話。――そのまま、永遠に、ソコで修行していてもらう。あいつを『無理やり閉じ込めるだけの力』なんて、俺にはないけど、『勝手にオリに入ってくれた』から、俺は、ただ、頑丈なカギをつくって設置するだけでいい。それで、ことはすべて終了」
「……」
「頑丈なオリをつくって、そこに閉じ込めて、カギをつくって設置して、封じ込める……その重労働を『全部やる』となったら、ざっと、今の100倍ぐらいの力が必要だけど、一番しんどい作業である『オリの作成』は、ヌル自身がやってくれたし、次に難易度が高い作業である『ソコに閉じこめる』ってのも、ありがたいことに、自分で勝手にやってくれた。……こうなりゃ、楽勝。さすがに、今の俺でも余裕で封じ込められる」
「……ほう……」
そこで、影から、トコが出てきて、
「ちなみに、それを私に邪魔される――とは考えなかったのか?」
表情が明らかにいつもと違っていた。
『普段は人格を消して奥に潜んでいるクロート』が、今は、トコのマテリアルの前面に出てきている。
『同じフラグメント』をもっていながら、まったく異なる二人。
トコ・ドラッグと、バリアブル・ミシャンドラ・クロート。




