22話 フラグメントとは。
22話 フラグメントとは。
「俺は、1000億年かけて、『ヌルに奪われた、世界1』を『再構築』した。センエースが望んでいたエンディングは、『世界1』を取り戻すこと。センエースにとって大事なものは、世界1であって、世界2と世界3は、センにとってそこまで重要じゃない。しょせんは、ただのあしがかり。あくまでも、最終目的は世界1を取り戻すこと。それがセンエースの最重要メインクエストであり、実のところ、唯一といっていいゴール地点。俺は、それをやってあげたってわけ。ここまでは大丈夫?」
「……ふむ……まあ、なんとか」
「センエースにとって大事な『フラグメント』は、世界2と世界3に散らばっていたから、それをかき集めて、『再構築した世界1』――あえて、ここでは『新世界1』と名付けるけど、その『新世界1』に『かきあつめたフラグメント』をぶちこんだ。だから、新世界1は、決して『空っぽの模造品』なんかじゃない。ちゃんと本物。『フラグメントがぎっしりつまった世界』を『ニセモノ』とは呼ばせない。『それだけの前提を積んだ世界』まで虚像扱いしてしまったら、じゃあ、本物って何? っていう、堂々巡りの水掛け論が始まってしまう」
「まてまて、置き去りにするな。まず、フラグメントってなんじゃ? 聞きなれない専門用語を前提に、話を前に進められても挨拶に困る」
「――一言で言えば、『そいつ』が『そいつであること』の『証』の一部」
「ん……んー……イマイチわからんな……いや、言葉の意味はもちろん分かるが、具体的な想像ができん……」
「例えばさぁ……」
そこで、カミノは、自分の髪の毛を一本、引っこ抜いて、
それを、セイラに見せながら、
「これは、俺の髪の毛だけど……これは俺かな? いや、まあ、ある意味で俺かもしれないけど、うがった見方ではなく、ド正面からの意見を聞かせて」
「まあ、違うじゃろうなぁ。あくまでも、抜け落ちたタンパク質であって、『ぬしである』とは言えんじゃろう」
「そう。さすがに、これを俺と呼ばれても困る。――じゃあ、これなら?」
そう言いながら、カミノは、魔法を使って、自分の下半身を切り飛ばした。
そういう系統の特殊な魔法を使っているだけなので、別に痛みも何もないが、見ている分には普通にグロい。
「イカれたことを平気でするやつじゃのう」
「こんなもん、今の俺にとっては、軽い手品みたいなものでしかないよ」
と、いったん、場を流してから、カミノは、
「この切断された下半身。これは俺かな?」
「まあ、違うじゃろうな。ぬしの一部だったもの……であることに間違いはないが。ぬしそのものではない」
「じゃあ、どこなら、俺そのものになるのかな? 脳? 心臓? それらを切り取って、ホルマリン漬けとかしたら、その標本が俺になるのかな?」
「……難しい問題じゃな」
「結論を言おう。俺が俺であるための証は、『外殻』には存在しない。いや、まあ、『体』にも、フラグメントがまったくないってことはないんだけど……でも、それは、『フラグメントに照らされて顕現した特徴の一つ』でしかない」




