20話 自由。
20話 自由。
「 ――[[ 《・『神のまにまに』・》 ]]―― 」
その瞬間、センエースの視界から色が消えた。線だけになった世界で、センは、
(……あれは……コスモゾーン……か……?)
何かを感じ取った。カミノに引きずられているのを感じながら、その裏で、センは、『大いなる力の波動』が、その身に触れているのを感じた。
感情が溶けていく。
そして、整理されていく。
頭の中が、概念だけで埋め尽くされて、
肉体がホロホロと崩壊して、
――そして、
――自由になる……
「自由じゃねぇだろ……そんなもんっ!」
ギリギリのところで、
センは、カミノの『献身的テロリズム』に抗った。
意識も記憶も感情も全部ぶっ飛ばされて、
けど、それでも、魂魄の奥に残っていたものを、
どうにか、必死になってかき集めて……
「――こんなもんが、トゥルーエンドであってたまるか……俺は……絶対に――」
飢えた獣がドン引きするハングリーさで、
センは、カミノに――世界に宣言する。
「俺は、俺のワガママを、必ず貫くぞぉお! ナメんな、ボケェええええええ――――」
最後の叫びと共に、センの残滓は、虚空に消えていった。
――全てを見届けたカミノ。
そんなカミノの影に避難していた『セイラ』が、
スゥっと、姿を現して、
「……そろそろ、何が起こったのか、教えてもらえると、ありがたいんじゃが? 正直、途中から、完全に置いてけぼりで、何一つ理解ができておらん」
「そうだなぁ……じゃあ、最初から、簡単に説明しようか」
そこで、カミノは、指をパチンと鳴らした。
すると、二人の目の前に、でかいホワイトボードが出現する。
カミノは、ペンを手に取って、サラサラと、
「まず、さっきの『センエース』ってやつと、『ヌル』ってやつの二人が、戦争している。それが、世界の根底にある神話。ちなみに、ヌルも、センエース。センエースのコピーであり劣化版。センエースは、『器』としては、この世で最も有能だから、コピー体がたくさんいる。その中で『最もゴミ』だったのがヌル。けど、だからこそ、大きな力を手にしてしまった。一番のゴミが一番厄介な化け物になった――この辺の詳細な理由に関しては長くなるから省略。とにかく、破格の莫大な力を得たヌルは、その力を暴走させて、『センエースが必死になって守ってきた世界』を全て喰らい尽くしてしまった。この食べられてしまった世界を『世界1』と名付ける」
登場人物と世界の構造を、ホワイトボードに描き示しながら、
カミノは、まるで、解説系ユーチューバーのように、
「センエースは、世界1で、たくさんの冒険をした。無数の戦争を終焉に向かわせ、大量のバグを殺し、愚神を殺し、究極超邪神を殺し、自身のコピー体であるP型を殺し、P型とソンキー・シャドーが合体したP型センキーを殺し、『世界1の深層のはざま』で、オメガを殺し、ウムルを殺し、ヨグを殺し……まあ、とにかく、『強大な敵』を殺しまくることで、『世界1』を守り続けた。えげつない時間と労力をかけ、必死になって、守り続けてきた『世界1』を……ヌルは喰らい尽くしてしまった」




