15話 死闘におけるジャブ。
15話 死闘におけるジャブ。
――色々と、自分の可能性を模索していた時期もあったけれど、
結局のところ、シックリきたのは『前陣速攻』だった。
とにかく、汎用性の高いスタイル。
高火力を、近距離で、延々に叩き込む。
それが、センエースという脳筋に最も適したビルド。
豪速の変則ステップで距離を殺して、
深淵閃風や神速閃拳や逆気閃拳で崩していき、
スキを見つけてはコンボ始動の閃拳を叩き込んで、
ここぞと言う時に龍閃崩拳でフィニッシュ。
――なんのひねりもない、愚直な特攻。
センは、『そのシンプルな戦法を追及することでしか、カミノに勝つ手段はない』と判断した。
相手は、戦術の天才。
盤上を支配する超越者。
同じステージに立っても、センでは鼻で笑われて終わり。
智謀の天才を崩すには、初志貫徹のまっすぐな暴力しかない――それが、センの決断。
それが正解だったかどうかはまだ分からない。
1000億年も費やしていながら、いまだに、一度も勝てていないから、もしかしたら、間違いかもしれない。
しかし、センはもう、軌道修正はしない。
この道と心中すると決めているから。
これで無理なら笑って死ぬと覚悟を固めているから。
「神速閃拳」
スライムの次に登場した『レーザーファルコン』は、
スピード重視の縦横無尽に飛び回る自然種の鳥系モンスター。
『地獄天7』という鬼難易度のカスタムを受けたレーザーファルコンの速度は、とにかくエゲつない。
存在値も普通に1000を超えている。
『専用マシンゴーレムを駆るセイラ(存在値700オーバー)』でも、攻撃を一発あたえることさえ困難な次元。
だが、そんな、エゲつない速度を誇るレーザーファルコンも、
センの神速閃拳から逃れることはできない。
これまでの1000億年の中で、火力を棄て、とにかく、速度を磨き上げてきた神速閃拳。
死闘における『ジャブ』の価値は大きい。
ジャブを制するものが命を制する。
距離を奪いたい時、
出方をうかがいたい時、
フェイントを入れたい時、
ズレてしまった間を埋めたい時、
相手の大技に対して牽制を入れたい時、
――他にも無数の意味がある神速閃拳。
『出が速い小技』を、とことん磨き上げてきたことで、
あらゆる状況に対して『有利』を取れるようになってきた。
「ギギュア!」
サクっと一撃で撃ち落とされたレーザーファルコン。
センのEX-GODレベルが、
『1090』まで上昇した。
ほんの数秒前まで、『1』だった『EX-GODレベル』が、一気に1000オーバー上昇。
――言うまでもないが、最初からこの成長速度だったわけではない。
最初の最初は、『1000』まで上げるのも、かなり大変で、多くの時間を費やした。
経験値12000倍のチートのおかげで、
一般人よりは遥かに上がりやすかったが、
しかし、大量の経験値は『強者』を倒さなければ獲得できない。
倍率がいくら高くても、ゴミしか狩れない状況では、いつまでたっても高みにはいけない。




