11話 オメガはチートですらない。
11話 オメガはチートですらない。
「オメガバスティオン!!」
キャンセル系のチートを使い、
センの龍閃崩拳をかき消したカミノ。
「はぁああああ?! ちょっと待て! お前、オメガは、使ったこと無――ぶげはぁあああああっ!!」
カミノの奇襲をモロにくらったセン。
あまりにもクリティカルすぎる直撃だったため、
ダメージ量がえげつなく、
「ぐっ……クソが……今回は……突破する気満々だったのに……クソがぁ……」
指一本動かすことすら、自由には叶わない状況で、
センは、ゲホゲホと吐血しながら、
「……まあ、いいよ……オメガが使えることは分かった……それなら、それで、対策――」
などと、ブツブツ言っているセンに、
カミノは、
「いや、使えない。無効化チートも、一応設定したけど、俺には使えない。今のは、お前が超必を打ってくるタイミングを読んで、元々設置していた、『グリムアーツを打ち消す地雷型のP魔法』を発動させただけ。オメガバスティオンのように、どんなタイミングでも、どんな技でも、自由に消せる能力は使えない。無理」
「……」
「でも、オメガバスティオンって叫ばれたら、ビビるだろ? で、実際、怯んで、対応が一瞬遅れて、直撃しただろ?」
「……」
「――オメガバスティオンは『使える人間なんかいない、死に技』のはずなんだけど……でも、お前なら、出来る気がした。だから、ハッタリに使った。これが、ハッタリとして機能する相手は、お前ぐらいのものだろう」
「……」
「という説明は全部嘘で、本当は、俺は、オメガバスティオンが使えるのかもな。オメガバスティオンは、最高に便利な技だ。無効化系の能力は、どの漫画やアニメでも、のきなみ、最強格。そりゃそうだ。スタ〇マリオ状態みたいなもんだからな」
「……」
「けど、だからこそ、俺は使えない。俺という概念の根底を覆すことになってしまうから。俺はイマジン側だから、ブレイクされちゃ困っちまう――なんて、それも、嘘かもね」
「……オメガバスティオンだけじゃなく……ファントムトークもお手のものか。……ずいぶんと……偏差値高ぇじゃねぇか」
一般人なら喋ることはおろか、指一本を動かすことすら難しい状況で、
センは、おしゃべりに興じながら、どうにか、ギリギリのところで、
ふらふらしながらも、なんとか立ち上がり、
「……次はやれる……仮に次むりでも、その次に挑戦する。……今回の『銀の鍵』にリミットは存在しねぇ。てめぇを殺すまで消えねぇ狂気。この地獄に、お前が死ぬ以外のゴールはねぇんだよ、カミノぉ」
その発言を受けて、カミノは、心の中で、
(いや、他にも、もう一つある。……問題は、うまくいくかどうか……)
小細工をかまそうとしているカミノの眼前で、
センは、自分の心臓に手を突っ込む。
「ぐぼへぇっ……っ」
盛大に血を吐きながら、
心臓から引きずり出してきた『銀の鍵』を、天に掲げて、
「はぁ、はぁ……何度でも殺しに来るぞ……絶対に殺してやる……覚悟しとけ、ボケが……」
最後に、そう啖呵を切ってから、
「……俺はまだ……頑張れる……っ」
キーコードを音声入力。
その瞬間、センの視界が歪んで滲む。
グルグルと視界が混ざって、溶けて――
 




