10話 最善の中間択。
10話 最善の中間択。
(こいつなら、いけるかもしれない……これだけ異常なら……)
そこで、カミノは、改めて、未来を計算してみた。
(ヌルと、こいつ……どっちの方が上かな……)
深く、深く、盤上にダイブ。
潜って、潜って、潜って、
その果てに、カミノは、
(――正直、今の段階では判断しきれない……となれば……最善の中間択を選ぶのが最良手)
そう判断を下したカミノは、
ムーブの質を大幅に変更した。
布石の布石の布石の布石の~~~~布石の布石を打つというムーブ。
一挙手一投足に『未来の地雷』を埋め込むという頭おかしい戦術。
それは、この世で、カミノにしか出来ない超絶技巧。
「龍閃崩拳!!」
闘いの果てに、
機を見計らったセンは、
カミノに対して、超必殺技を放った。
『盤上の支配者』としてのイカれ方で言えば、カミノの方がはるかに上だが、
『狂気の努力家』としてのイカれ方で言えば、さすがにセンの方が上になる。
『努力』だけを誇るヤツは無能。
努力を結果扱いするのは、もはや努力に対する冒涜。
それがセンの流儀の一つ。
だから、いつも、センは貪欲に『結果(完全勝利)』を求める。
なんのための努力であったか――それを、常にキッチリと清算しようとする。
『夢を追うこと』――それそのものを目的とすることは、絶対にありえない。
『頑張ったから何だってんだ』『敗北に価値はない』
『勝つこと! それ以外に未来を切り開く術はない』
『負けても次があるスポーツなら、敗北にも、多少の意味はあるか知らんけど、殺し合いの場において、敗北は死ぬってことだ。俺が負けたら全部終わる。だから勝つしかねぇんだ』
『絶対に勝つしかないという背水の陣』の最前線で、『この世の誰よりも努力を積み続けた上』で、『努力を誇ることに意味はない』と真摯に叫ぶことができる覚悟。
『たどり着くことでしか昇華されない』という残酷な事実と向き合う底意地。
――そんなセンの『努力のお会計』に対し、
カミノは、
「上エックス、下ビー、エルワイ、アールエー、モキュモキュ、フルモッキュ、P10000000」
デバッグコマンドを入力する。
F魔法のFは、『禁止』を意味する『フォビッド』。
それより上位の『禁止の意味』をあらわす『プロヒビット』を冠するのが『P魔法』。
P魔法は、F魔法のカテゴリの中の一つ。
F魔法という巨大な魔法形態の中の一つにすぎず、別枠というわけではない。
F魔法は、禁止伝説ポケ〇ンみたいなもので、
P魔法は『すでに使えない禁止伝説のメガシ〇カ』みたいなもの。
そんな中における『Pの1千万番』は、
いわば、『禁止の中の禁止』の『枠外』という次元。
「――神威次元砲――」
猟奇的な照射。
全てを食い尽くそうとしているかのような膨大な光。
そのエネルギーごとぶっ潰そうと、
センは、龍閃崩拳に、さらなる覚悟をブチ込めた。
その一手に対して、
カミノは、
「オメガバスティオン!!」
キャンセル系のチートを使い、
センの龍閃崩拳をかき消した。
「はぁああああ?! ちょっと待て! お前、オメガは、使ったこと無――ぶげはぁあああああっ!!」




