8話 『閃光神化』VS『創世神化』
8話 『閃光神化』VS『創世神化』
ファントムトークを炸裂させて、センは、さらなる速度を求めて加速した。
『閃光神化』VS『創世神化』
とんでもないスペックを誇る固有神化同士のぶつかり合い。
苛烈で脳筋なセンに対し、
カミノは、落ち着いて盤上を支配しようとしていく。
無限の布石が積み重なっていく。
一見するとバラバラの星が、
気付いた時には、
カミノの勝利のためにつながっていく。
「カミノぉおお! てめぇのヨミがラリってんのは、もう十分、体験してきたぁあ! いまさら、てめぇが何をしても、驚きゃしねぇ! 下手に抵抗せず、俺に圧殺されろぉおお! 頼むからあぁあああ! 300円あげるからぁあ!」
懇願の領域に到る叫び。
カミノは、センの慟哭など聞いちゃいない。
(……世界が、どんどん小さくなっていく……)
ゾーンに入ると、盤が狭く見えることがあった。
それと同じ感覚が世界に適用される。
全部が手に取るように分かる。
見える。
センの全部が。
センが背景になる。
センエースをモブにしていく洞察力。
「センエース……お前……思ったよりも……強くないな。才能が薄い。というか、ない」
ボソっとつぶやいたセリフに、
センは、
「……お前、毎回、それ、言うなぁああ! もう聞き飽きてんだよ、カスがぁ! はいはい、はいはい! お前の方が強い、強い! 最初から言ってんだろうが、ボケェ!」
そう叫んでから、
「でもなぁ! これだけは肝に銘じておけよ! 俺より強いという程度でイキっているような真正のカスが、俺に勝てると思うなぁああああ!」
センエースは、さらに加速していく。
とどまることを知らず、
前へ、前へ、上へ、上へ。
惜しみなく全部を投下して、
さらなる世界に届こうと必死。
その必死さを前にして、
カミノは、
「センエース……どうやら、本当に、俺は、お前と何度も戦っているみたいだな……」
ボソっと、かみしめるように、
「その記憶はないが……心に、その残滓がこびりついている――そんな気がしてならない」
闘いの中で、カミノは常に冷静だった。
苛烈なセンとは対照的。
カミノは、殺し合いではなく、対局に臨んでいる。
「センエース。俺の奥に、『お前の武』に対する『馴染み』がありすぎる……俺は、間違いなく、お前と、膨大な数の対局を重ねてきている……」
デジャブが体の奥に流れゆくたび、どんどん、『何か』を思い出す。
その『何か』を、言葉で表現するのは、非常に難しい。
あるいは『武のパッケージ』かもしれないし、
あるいは『根源的な力の使い方』かもしれない。
どんな言葉を使っても、たぶん、正解だろうし、そして、不正解なのだろう。
なんて、なんの意味もない言葉遊びで、自分の奥を閉じ込めたりして。
そんな、非生産的でありながら、実は何よりも生産的な『流』を経たのちに、カミノは、
「センエース。俺がお前に負けることはありえない」
そう言いながら、
センの懐にユラリと忍び込む。
すべての布石が、この瞬間につながった。
事前に放っていた魔法の数々、ありとあらゆるスキルの連鎖。
すべてが集約して、この『一撃』につながった。
「うごぉへぇっ!」
ボコボコにされるセンエース。
必死になって磨き上げてきた力を、いいようにいなされる。
力技を、軽やかに吸収されて、跳ね返される。
嫌味なほど精緻に、柔よく剛を制される。




