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5話 俺のヤバさはこんなものじゃない。


 5話 俺のヤバさはこんなものじゃない。


「搦め手に対して、丁寧な対処を施す……俺は、そういうのが嫌いだ。苦手だから、嫌いになった。……そして、脳筋を貫いた。『デバフの鎖』を腕力で砕く鍛錬……フィジカルに極振りした上で、何度も何度も、何度も何度も何度も何度も、繰り返した……そうやって俺は、今日に辿り着いた。生半可じゃないんだよ。今の俺は」


 鎖を破ったセンは、

 暴露のアリア・ギアスを積みつつ、

 『ちゃんと神気を捻出できること』を確認してから、


「ほかにも質問があるなら答えてやるよ。俺が積み重ねてきた全てを教えてやる。その覚悟が、俺を底上げしてくれる。ちなみに、死神の鎖に対処できるようになったのは、500億年ぐらい前。毎回、お前は、これをかましてきていて、そして、毎回、俺は、同じ説明をしてきている。この説明もそう。……正直、ダルいが、しかし、そのダルさも俺を底上げしてくれる……全部あますことなく積み重ねてきた……なんで、そんなクソだるいことをしてきたか分かるか? ……全部、てめぇを殺すためだ」


 ドンッと、覚悟を示されて、

 カミノはゾっとした。

 ここまで、粘着性の高い殺意を抱かれているという事実に対して、

 根源的な恐怖がこみあげてきた。



「ふふん。どうだ、震えるだろ? しかし、俺のヤバさはこんなもんじゃないぞ」



 そう言いながら、

 センは、深く集中していく。

 無我の境地では届かない世界に行こうと必死。


 笑って見せているが、

 実のところ、そんなに余裕があるわけではない。


 これは、神闘のスタイルの一つ、念気微笑の型。


 その神髄を一言で表現すると、

 『どんな時でも常に薄く笑ってろ、そうすりゃ不気味で、相手が怯むから』

 というもの。


 一言でまとめるとアホみたいな型だが、深堀していくと、結構、色々な真理が含まれている。


 ――絶望を前に、薄く笑っていられるだけの胆力は、なかなか練れない。

 神同士の高次戦闘では、最終的に、胆力のぶつかり合いで勝敗が決する。

 念気微笑の型は、高次戦闘における重要な心構えでもあり、器でもある。


「カミノ……お前は、今日死ぬ。このクソ長かった敗北者の旅路も、今日で終わる……」


 深く、深く、研ぎ澄まされていくセンの神気。

 その膨大な力を前にして、

 カミノは、


「……」


 思考の底へと沈んでいく。

 同時に、自分の神気も練り上げていく。


「……ふぅぅううう……」


 盤上へのダイブ。

 無限の可能性と対話する。

 膨大に膨れ上がったメモリと向き合って、パズルを組み立てる。


 新たな力で、コスモゾーンを覗き見る。

 改竄するほどの能力はないが、情報を盗み見るぐらいはできる。


(相手はタイムリープを使う。――なんで、タイムリープを使う――俺に負けたから――ここから俺に何か手がある――感じる。俺の中には、まだ可能性がある――けど、仮に、それを開花させてこいつに勝てても、どうせ、こいつは、また戻る――それじゃあ意味ねぇ――今回でループは終わりかもしれない。けど、そうじゃないかもしれない――希望的観測には頼れねぇ――勝つためには――本当の意味で勝つためには――大事なものを守るために――俺は何をすればいい――)


 深く、深く、集中していく。

 自分にできる全部と向き合う。


 その結果、



(……あった……っ)



 複雑で、奇怪な道筋。

 しかし、間違いなく『勝ち筋』だと断定できる巨大迷路。






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