4話 貫いた脳筋。
4話 貫いた脳筋。
センは、頭の中で、
どうでもいい言葉を紡いでは消していく。
闘いに集中する中で、
ある種、卑屈なポジティブに浸る。
そうやって、思考にスペースを設けて、
意識を適切に分散させることで、
『無意識の反射』の精度を上げようとする。
頭カラッポの『空』は、武の道において、あまりにも修羅がすぎた。
長い研鑽の中で、頭の中をゼロにする、無我の境地は、武の領域では足かせになると理解できた。
この理解も、いずれ、また、新しい極致によって塗り替えられてしまうのだろうけれど、しかし、今のところ、センは、無我の集中を否定するシーズンに入っていた。
これが正解かどうかはどうでもいい。
間違っていても、糧にはなるから。
今は、まだ道の途中。
完全な答えを求める方がどうかしている。
命は完成しない。
永遠に未完成だからこそ、
永遠の成長を享受できる。
――などと、また思考が散乱していく。
これでいい。
「閃拳!」
何度、繰り返してきただろう。
この愚直な拳。
ただ繰り返した。
糞バカみたいに。
何度も、何度も。
磨きぬいてきた結晶ともいえるけれど、
『すり減らした』とも言えなくはない。
――そんな、『複雑な感情』も込めて、
センは、オーラと魔力でガチガチに厚塗られた拳を放った。
その一手に対し、
カミノに召喚されたセイバーリッチは、
「マキシマイズ・ドリームオーラ・タナトス」
超高位のバリア系F魔法を使う。
常時展開させているバリアに重掛けしていく。
そうやって、防御をガチガチにかためるが、
その『硬さ』を、センの拳は、ゆうゆうと貫いていく。
「ぶへぁっ……っ!!」
届いた拳は、セイバーの全てを、一発でコナゴナに砕いた。
磨き抜かれた拳は伊達じゃねぇ、と得意満面の笑みを浮かべるセンエース。
そんなセンの肉体に、
バラバラになったセイバーのカケラが、『鎖』となって、まとわりついていく。
その状態を尻目に、
奥で、ゆうゆうとオーラの捻出に勤しんでいるカミノが、
「セイバーリッチの怨念をナメるなよ。そいつの執念はゴキブリが五度見するレベル! セイバーの『死神の鎖』は、相手の神気をせき止める! 神気がなければ、ただの人間! 閃光神化だか何だか知らないが、神でなければ、単なるハリボテ!」
などと、暴露のアリア・ギアスを積みつつ、
華麗に決まったカウンターにご満悦をかましていると、
その視線の先で、
センは、
「コレの破り方に悩んでいた時期が、俺にもありました」
などと、ボソっと、つぶやいてから、
「ふんっ!」
と、強く気合いを入れると、
『死神の鎖』は、バリィイインと、勢いよく砕け散った。
その様を見届けたカミノは、
「……ふぇ?」
と、アホみたいな顔で呆然とする。
そんなカミノに、センは、淡々と、
「搦め手に対して、丁寧な対処を施す……俺は、そういうのが嫌いだ。苦手だから、嫌いになった。……そして、脳筋を貫いた。『デバフの鎖』を腕力で砕く鍛錬……フィジカルに極振りした上で、何度も何度も、何度も何度も何度も何度も、繰り返した……そうやって俺は、今日に辿り着いた。生半可じゃないんだよ。今の俺は」




