1話 1000億年の旅路。
1話 1000億年の旅路。
その尊大な自己紹介を受けて、カミノは、
(……センエース……)
敵の名前を、心の中で、反芻してから、
「……なんの……つもりだよ……センエース……なんの恨みがあって――」
「恨みはない。いや、まったくないと言えばうそになるが、恨みが原動力ではない。もはや、そういう感情も消えかかっている。今の俺はトゥルーエンドに辿り着きたいだけ。それだけだ」
何を言っているのか、さっぱり分からない。
カミノは、ギリっと奥歯をかみしめるばかり。
そんな彼に、センは続けて、
「……簡単に言うと、『トコ・ドラッグの中には、クロート』が、『セイラ・アカナティス・インサイドギルの中には、超苺』が潜んでいる。どっちもヤベェ実力者。特に超苺がヤバすぎる。底知れねぇ異次元の不気味さがある。だから、殺した」
「なんでっっ、殺したぁあああ! こいつらは、悪いことは、何もしてねぇえだろぉおお! 俺はやったけどよぉお! こいつらはぁあああ、何もぉおおおお!」
「話、聞けよ。やべぇ二人だから殺したって、今、言っただろうが。表層の女は、確かに、何も悪いことをしてねぇよ。けど、トコもセイラも、実質的には、真・神帝のあやつり人形。各々の感情・思想に関係なく、いずれはのっとられる。だから、中身ごと殺すという対処をするしかなかった」
しんどそうに、タメ息をついてから、
「……なにもせずに楽な道に逃げたわけじゃない。お前ら三人を放置するパターンも、何度か試した。トコとセイラの心の強さに賭けるって手段も山ほど試した。――けど、クロートも、超苺も、『本体(トコ&セイラ)』に『意識を完全に奪われた時の保険』を打っていた。どれだけ女性陣の高潔さや気高さに心を浸食されても、最終的には、絶対に切り返して奪い返せるように。真・神帝は慎重で狡猾で抜け目がない。真・神帝のプランを崩す方法もいくつか考えたが、俺の頭じゃ、答えにたどりつけなかった。Tの知識を借りたかったが、俺が時間遡行できるのは、Tが殺された後でなぁ……」
「時間遡行……お前、ループできるチートをもっているのか。それって、あれか? 『銀の鍵』あたりか? だったら、もろもろの疑問に合点がいく。お前のその『いろいろなことを知っていそうな雰囲気』に関しても理解が出来る。了解だ……というわけで、すぐに、時間を戻せ……そして、俺に、さっきの話をしろ。どうにかしてやる。……全部守るって決めたんだ……だから……」
「それもやった。お前にも、何度も、何度も、何度も、頼ってみたが、無理だった」
「……」
「俺のループが、10回、20回だと思っているなら、まずは、その誤解をあらためろ。俺は、今日までに、全部で『1000億年分』以上、ループしてきた」
「……1000……億年? ……1000億? ……はぁ?」
いまだ、トコとセイラを殺された怒りは燃えているが、
この瞬間だけは、センエースの異常性におののくことしか出来なかった。
(1000億年? マジで言ってんのか? 1000億って……そんな、小学生の小ボケみたいな数字……)
と、全力で引いているカミノに、
センは、
「クロートにTが殺されて、お前がこっちにきて、トーンの上級国民を殺しまくって、今日にいたるまでの3か月を……もう何回も何回も何回も何回も……トゥルーエンドを目指して……ずっと、ずっと、ずっと……もはや、正確な回数も年数も覚えちゃいないが、とにかく、やまほど、繰り返してきた。で、全部ダメだった。あと、残っているのは……お前ら陣営を、まとめて、全員、殺すルートだけ」
「……」
「お前はすげぇよ、カミノ。どんだけ努力しても……俺は、お前を超えられなかった。お前、天才すぎんだよ……Tも相当な天才だが……お前は、一個、その上を行っていた。万能性という点では、Tの方が上だが、こと、盤上を支配する戦闘思考力という点においては……おそらく、お前を超える者は、どの世界にも存在しない」
「……」
「けど、諦めねぇ……トゥルーエンドに届くまで、俺は絶対に折れてやらねぇと誓った……歯ぁ食いしばって、死ぬ気で努力して、頭おかしくなるほどの時間をかけて……そうやって……積み重ねてきた……そして、ようやく届いたんだ……刮目しやがれ。これが……俺の積み重ねてきた成果だ……ただの究極超神化では届かない『専用神化』――その高みを超えて、超えて、超えて、超えた姿ぁ!!」
オーラと魔力が、はちきれんばかりに充満していく。
膨れ上がっていく。
強大な奔流。
つまりは、
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「――/\**【【閃 光 神 化 5】】**/\――」
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宣言により解放された神気は、
固有の輝きを飲み込んで、
より洗練された『象』を手に入れた。
間違いなく、そこにある結晶。
結晶でありながら、波の状態でもあるカルマ。
果てしなく威風堂々にして威風凛々。
ただひたすらに旭日昇天、
不退転の森羅万象を包み込む荘厳すぎる輝き。
静寂の中『尊い輝き』に包まれているセンエース。
背負っているのは、特異な神字が浮かぶ閃光の嵐。
『最果ての結晶』が瞬き続ける絶烈な神のオーラ。
自らに課した限界を、コナゴナにブチ殺して、
いと美しく、舞い散る閃光。




