最終話 起承『転』結。
最終話 起承『転』結。
「もちろん、トーンを平定して終わりではない。むしろ、ワシらの闘いはこれからじゃ。このまま、世界を平定していく。そうして、完璧な理想郷を実現する――」
最後まで、セリフを言えなかった。
「ぐふっ」
なぜなら、心臓を貫かれたから。
血が冷たくなっていく。
中心がズタズタになる。
激しい魔力が、セイラを焼き尽くさんと、唸るように輝いていた。
「ぐっ……うぅぅ……っ!!」
責任感の強いセイラは、『ここで死ぬわけにはいけない』と、
必死になって、どうにか、己の死に抵抗しようとしたのだが、
しかし、本当に、何をしても無意味で、だから、
「……カミノ……」
最後に、セイラは、カミノの目を見て、
「……ごめん……」
ギリギリのところで、その言葉だけを発した。
本当なら、もっと言いたいことはたくさんあった。
お礼もたくさん言いたかった。
けれど、『こんなところで死んでしまって申し訳ない』という感情を伝えるのが精いっぱいだった。
『世界のために、たくさん頑張ってくれたカミノに、なんのお礼もできないまま死んでしまって、本当にごめんなさい』
そんな、彼女の、あまりにも生真面目すぎるメッセージを、
カミノは、正確に受け取った。
だからこそ、心が砕け散りそうな痛みを覚えた。
「なんっ……どうして……っ!」
あまりに唐突な『彼女の死』を前にして、普通に混乱する。
理解が追い付かないままに、
今度は、トコ・ドラッグが、
「――がはっ」
心臓を貫かれて、盛大に吐血する。
基本的には、カミノの影の中に潜んでいるトコ。
『陰』からムリヤリ引きずりだされて、
そのまま、ザックリと心臓を砕かれた。
絶対に抗えない死が、濃密な影をさす。
意識が間違いなく消えゆく間際に、
トコも、カミノの目を見つめて、
「……っ……逃げっ――」
『何か』を伝えようとしたが、
しかし、その前にこときれてしまった。
完全に逝ってしまった二人の躯を前にして、
カミノは、
「……う、うぅ……うぅうううううううぎぃいいいいっ……ふ、ふざけるな……」
あまりにも唐突な出来事に、最初は混乱するばかりだったが、
「す、すぐに蘇生――」
死者を蘇らせるチートはいくつかある。
その全てを、即座に使用して、どうにか、二人を復活させようとする。
しかし、
「なんで?! なんで、生き返らない?! どうして?!」
また、混乱しているカミノに、
――『今回の殺人事件の首謀者である男』が、
不可視化状態を解いて、
カミノの目の前に顕現する。
「……カミノ。お前のチートはだいたい理解した。『ただの死』なら、楽勝で蘇生可能だろうが、『中心』を奪い取ってしまえば、そう簡単には蘇生させることはできない。中心をぶっ壊した死でも、時間さえかければ、どうにかなるくさいが……そんな時間は与えねぇ……てめぇはここで死ぬ。俺が殺す」
「……」
カミノは、深い怒りのこもった目で、
目のまえにいる男をにらみつける。
「……誰だよ……お前……」
「俺は、運命を調律する神威の桜華、舞い散る閃光センエース」




