95話 悪魔的発想!
95話 悪魔的発想!
(こいつの希望を、『民衆にとって分かりやすくメリットのあるもの』として提示することができれば……民衆に抱かせた希望をまるごと絶望に変えるということも可能。……セイラはいいエサだ……こいつをうまく利用すれば、微妙な連中を狩り続けるよりも、よっぽどはやく、ニコトピアを復活させることができる……そんな気がする)
あくまでも予測。
けれど、この推測は間違っていないだろう、という妙な確信があった。
まるで、誰かに思考を誘導されているかのように、カミノは、既定路線に沿った未来を考えていく。
しかし、タナカ家の面々とは違い、
彼の『純粋知性』では、『誘導されているのでは?』という『気付き』には届かない。
だから、最後まで、彼は無様に踊り続ける。
呑気に、
(孫○飯を見つけた時のスポポビ〇チとヤム〇って、こんな気持ちだったのかな)
などと、そんなことを考える始末。
救えねぇ。
(こいつの才能を利用して、もっともっと太らせる……今よりもはるかに強くして、人類全体の希望の象徴にまで押し上げる……その上で、こいつと、全人類の希望を絶望に変換させる……そのぐらいすれば、さすがに復活するはずだ。それでも復活しなかったその時は、また、別の方法を考えるさ)
決断を下すと、
カミノは、『とびっきりの決め顔』で、
「……『俺たちの理想』を叶えるためには、お互いが強くなる必要があると思うんだが、この点にかんしてはどう思う?」
「同意見じゃな。互いに磨き合い、切磋琢磨していく必要があるじゃろう」
「悪くない。OKだ。スクラムを組もう。――俺を失望させるなよ」
こうして、カミノとセイラとキメラのドリームマッチが決まった。
癖しかない元主人公たちのイカれたコラボレーションが、
ここから、世界を豪快に翻弄していく。
★
そこから先の展開は、かなりスピーディだった。
簡単にサクっと概要だけを述べていくことにする。
まず、カミノは、継続的に、セイラを鍛えていった。
セイラに神闘を叩き込んでいき、その流れの中で、自分も開花させていく。
最初はなかなか気づかなかったが、途中から、
(あれ? 俺、もしかして……神闘に向いてる? 囲碁の才能はなかったけど、こっちの才能はあった感じ?)
と、自分がどんどん強くなっていく理由を『誤解』した。
実際のところは、『碁打ちとしてのイカれた資質』がガッツリと開花してきており、それが、神闘に活かされている――というのが真実なのだが、しかし、カミノは、自分の碁打ちとしての才能を、完全に見限っているため、『その可能性』を一切考慮しない。
ただ、それでも問題は何もなかった。
カミノは、着々と、『必要』な力を身に着けている。
――才能開花に後押しされて、どんどん強くなるカミノ。
それに引っ張られるようにして、セイラもどんどん強くなる。
カミノとセイラは、何度も、何度も、何度も、何度も、互いの武をぶつけあい、そして、高め合っていった。
セイラはカミノの武の支えとなり、
カミノもまた、セイラの武の支えとなる。
カミノの『爆速すぎる才能開花の加速』を、
セイラが、そのひたむきさと魂の美しさで丁寧に整えていく。
そうして慎重に磨かれたカミノの武を手本として、
セイラも大きく成長していく。




