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91話 怒りを操る。


 91話 怒りを操る。


 一撃で対局(殺し合い)を終わらせにかかった神の一手。

 そんな、えぐりとるような一撃に対し、

 セイラは、


「定石との向き合い方がイーブンになれば……さすがに、『小賢しさ』でワシが負けることはありえん」


 この短時間の間に学習したすべてを、

 ここでの『切り返し』にブッ込んだ。


 カミノは、布石こそ大事にしていたが、

 結局のところ、最小の単位でみれば、

 『右ストレートでぶっとばす、まっすぐいってぶっとばす』の戦法だったので、

 『いつ、どこで、なにを、どういうふうに』――そのあたりが見えていれば、

 カウンターを叩き込むことも、そこまで難しくはない。


「ぶげへっ!」


 あまりにも想定外のカウンターを顔面に叩き込まれたカミノは、そのままみっともなく吹っ飛ばされた。


 吹っ飛ばされている中で、カミノは、必死になって、

 『なぜ、こんなことになっているのか』を考えた。

 憤怒と驚愕のミルフィーユの中で、妙にキレキレになった頭脳が、答えを導き出す。


(……俺の感情を……コントロールした……?)


 正解だった。


 ――闘いの中で、カミノの『性格』を、なんとなく理解したセイラは、

 『自分とカミノの差』を布石に使う作戦を思いついた。


 簡単に言えば、


 『ありえない程の速度で神闘を理解する事』で、

 『カミノに対して、才能マウント』を決め込み、

 『嫉妬の憤怒を抱かせて、突貫させる』という、

 ――俯瞰でみると『バカすぎる手法』を使った。


 もっと言えば、

 そんな『ワンパクな愚かさ』すらも、華麗にねじ込んでいく胆力。

 それを、カミノに魅せつけたセイラ。


(……人の感情につけこむ手腕……その老練な手管……ほんとにガキか、こいつ……)


 相手の感情を揺さぶる手法を使うジジイは多い。

 年を重ねて思考の瞬発力に陰りが見え始めると、

 人は、人生経験を武器にしはじめるものである。


 『艱難辛苦の人生を乗り越えてきた』という『本物の称号』で、

 『才能しか頼るモノがない若造』を揺さぶり翻弄し、叩き潰す。


 ――これまでの人生で、何度かくらってきた、『ヤングキリング(人生の初心者殺し)』を頂戴したカミノは、それまでとは違った目で、彼女を見据える。


 その瞳に対して、

 セイラは、次の解答を出す。


「死線のくぐりかたがヌルいなどと言ってくれたが……ワシも、そこそこ、超えてきておるのよ。魂をかきむしりたくなるような鉄火場を」


「……」


「狡猾さにおいて、若造に負けるほどワシは安くはない。まあ、もちろん、才能で言えば、ぬしの方がはるかに上じゃけどな。ワシごときでは足元にも及ばん。というよりも、ぬしに匹敵する才能を持つ者など、そうそうおらんじゃろう。ワシの、『元親族』は、全員、ハンパない天才ばかりじゃったし、棋士も何人かおったが、こと、棋力という点に関して、ぬし以上の者はおらんかった」


(……最初から……なんとなく思っていたが……こいつ、ただの元主人公じゃなく……日本からの転生者か……)


 キメラの場合は、元主人公の器というだけで、日本から転生していたわけではなかった。

 だが、彼女の場合は違う。

 明らかに、日本からの転生者であり、かつ、カミノも同じであると気づいている。



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