表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

538/1228

86話 俺の人生を教えてやる。


 86話 俺の人生を教えてやる。


(……神闘の真理の部分には、『碁の概念』をぶち込んである……俺に『プロになれる器』はなかったが、しかし、間違いなく『碁の才能』はあって、かつ、死ぬ気で努力してきた……つまり、それが、どういうことか……一言で言えば……『俺の碁の強さは、一般人の視点では、神レベル』ってことだよ)


 カミノは、地獄の最果てとも呼べる『死線』で、もがき、あがき、苦しみ続けてきた。

 ――そんな自身の、研ぎ澄まされた絶望と悲壮感を、全て、『自身の魂に顕現させた神闘』に注ぎ込む。


(――『目ぇ血走ったプロの卵たち』と、人生をかけて、しのぎを削りあった。数えきれないほどの実戦で戦術を学んだ。無限の死活と手筋を浴びて、頭おかしくなるほど詰碁を繰り返し……学習して、復習して、薄い部分を洗い直して……魂と心と体にたたきこんで……『相手を殺すため』の思考の基礎と応用を磨き、『自分が生き残るため』の最適の作戦を組み立てる訓練を続けた)


 ――その経験を、盤面ではなく、体躯で活かすだけ。

 体力の課題と問題点は破格のチートでカバー。


「知性の格闘技。それが、『神闘の真髄』……の一部。俺に扱える神闘は、一部の一部だが……それでも、現闘しか知らんヤツの視点では、とんでもない脅威だと思うね」


 まだ『五目並べ』しかやったことない子供を、

 むりやり『囲碁』の勝負に引きずり込むという大人気のなさ。


 しかし、今は『命のやりとり』の領域。

 だから、卑怯もクソもない。

 死んだ方が悪い。

 それが死線。


 そんなフロントラインで命を削り、そして死んでしまった男に甘さはない。


「上エックス、下ビー、エルワイ、アールエー、モキュモキュ、フルモッキュ、G0001001」


 拳を交わし合う、忙しい『りゅう』の中で、

 カミノは、デバッグコマンドを入力し、


「閃拳!!」


 『碁打ちを目指して命を削ってきた』という経験値をぶち込んだ必殺技を決める。


 局所的な『生き死に』をずっと模索し続けた人生。

 その人生が、今、拳に宿る。


「ぐっっっ!!!!」


 破格の衝撃とダメージを受けて、セイラは後方に吹っ飛んだ。


 ――カミノの閃拳込められているオーラと魔力量は正直微妙。

 だが、クリティカル率と、クリティカルダメージ量が、ハンパではなかった。


 破格の一撃を受け止めたセイラは、


(……なんじゃ? 今の一撃は……重さが異質……どういうチート……)


 理解できない一撃に対し、

 はじめて、カミノに対して、実質的な恐怖を抱いた。


 先ほどまでは、『どうとでも対処できる』という余裕があったが、

 今は、それが、わずかにゆらぐ。


 カミノは、そんなセイラに対し、


「目が変わったな。今が『命のやり取りだ』って自覚が芽生えたか? じゃあ、ここからは、本格的な死闘だな……精緻せいちなヨミが生きてくる。俺の手に対して、お前がどう動くか……定石の連鎖だけでは測れない無限のせめぎ合い……その領域でこそ、俺の資質が活きてくる……」


 武を構えなおす。

 だいぶお粗末ではあるものの、

 しかし、その深部には、確かな重さを感じる武。


「行くぞ……俺の人生を教えてやる」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ