82話 専用マシンゴーレム。
82話 専用マシンゴーレム。
「……専用マシンゴーレム? ……はぁ? なんじゃ、そりゃ……そんなもん、知らんぞ……どうなってんだ?」
「ワシも、ワシ以外の者で、コレを使うことが出来る者には、まだ出会ったことがないよ。ワシだけの特別……どうぞ、ごゆるりと、堪能してほしい」
そう言ってから、
セイラは、軽やかにとんだ。
おそろしく軽快な動き。
マシンゴーレム特有の鈍重さは皆無。
洗練されていて、最適化されている――そんな印象を受けた。
セイラは、専用マシンゴーレムに搭載されている魔法兵器を巧みにあやつり、
カミノに圧力をかけていく。
(……破格にエグいスピードと制圧力……キメラと合体する前だったら、秒で殺されていたな……)
今のカミノでは、『戦闘力』という点でも『解析力』の点でもゴミすぎるので、
キメラとの合体を、まったく活かしきれていない。
現在、キメラとの合体で得たものは『存在値200』という数字だけ。
――その『しょっぱい数字』に『なんとか救われている』というのがカミノの現状。
あまりにも情けない話。
とても、原初の創造主とは思えない無様な姿。
(……専用マシンゴーレム……あれの異質さは異常……いくら解析しようとしても、さっぱり意味が分からない……完全にブラックボックス化している……マジで、エグいな……)
カミノの現時点における解析力は微妙。
タナカ家の面々ほどの精度には届かない。
それでも、違法魔法の力と、棋士を目指していた者の知性と、マシンゴーレムに対する理解力を駆使すれば、最低限ぐらいは見えてくるはず――そんなふうに考えていた時期がカミノにもありました。
実際のところ、専用マシンゴーレムという概念に対して、
何一つとして理解することはできなかった。
(明らかに俺のスペックを超えた仕様……俺に設計できる範囲を超えた、文字通り、神の諸行。俺ていどでは見えてこない領域……まあ、そもそもにして、世界を創造するというのが、俺ごときに出来るわけがない領域なのだけれど……)
所詮、自分は、誰かの操り人形。
そんな風な理解は、前々からしていた。
その認識が、専用マシンゴーレムという、到底理解できない概念を前にしたことで、より顕著になった。
普通のプライドを持つ者なら、そこで、落ち込んだり、怒りを感じたり、自分を操っているであろう神を探したりするのだろうけれど、
しかし、カミノは、
(……誰が、何の目的で、俺をコマにしているのか……そんなこたぁ、どうでもいい……)
彼の意志はゆるぎない。
整えられた父性が、ゆらぐことを許さない。
(与えられたものであろうと、強制されたものであろうと……どうでもいいんだ……)
カミノに、必要以上のプライドなどない。
そんなものを背負える人生ではなかった。
夢が破れた世界でゾンビをしていただけ。
(ニコトピアを取り戻せるのであれば……俺は、別に、操り人形でもいい……邪神の手駒でも、死神の手先でも……なんでもいい……とにかく、俺は……必ず、ニコトピアを取り戻す)
改めて覚悟をきめなおすと、
「下、上、右、左、セレクト、スタート、セレクト、スタート、ビー、0200980!!」
新たなデバッグコマンドを入力。
技関連のコードではない。
これは、
「――ギャグ漫画補正を搭載!」




