77話 セイラ・アカナティス・インサイドギル。
77話 セイラ・アカナティス・インサイドギル。
(庶民も殺しまくり、社会全体に恐怖を巻いて、希望を絶望に変えた方いいのは事実だが……『未来に対する不安が強くて、存在値が低い庶民』を殺すよりも、『能力が高くて、未来がセーフティーの希望であふれている上級国民』を徹底的に壊してから殺す方がはるかに効率的……)
だから、今夜も、カミノは、イカれた上級国民だけを殺し続ける。
まともな『強者』は、手ゴマとして回収しつつ、
救いようのないクソどもは、徹底的に痛めつけて殺し続ける。
そんなことを続けた結果、
ヤバすぎる殺人鬼は、いつしか、
庶民の間では、『腐ったトーンを浄化する救世主』と呼ばれるようになった。
殺人鬼のことを、義賊でも、ダークヒーローでもなく、
純粋な救世主という扱いをする庶民に対し、
国は、『あんな殺人鬼を持ちあげるなどどうかしている』と、
怒りの御触れを出したものの、それは逆効果で、
『ダメと言われれば言われるほどに燃える』のが人のさが。
庶民の間での、殺人鬼に対する人気は上がり続けた。
大半の上級国民は、この状況に憤慨し、
どうにか、殺人鬼を狩猟しようと、躍起になっているが、
そんな中、
『上位』の上級国民の中でも、トップ層に位置する彼女、
『セイラ・アカナティス・インサイドギル』だけは、
この状況を、『待ちに待った、人生最大のチャンス』だと捉えていた。
彼女は、ずっと待っていた。
この腐敗した国を『真の意味で浄化』するチャンスを。
「セイラ、本当に護衛をつけなくていいのか? お前の財力なら、10つ星の冒険者チームを2~3組一度に雇えるだろう?」
セイラの側近である『マリオット・ロバン』
年齢は20代の後半で、まだらに日焼けしていて、頬に大きなキズが入っており、特徴的な分厚い唇をしている。短髪でガッシリとした肉体の、どこまでも軍人然としたアマゾネス。
立場としては、セイラの部下だが、セイラが赤子の時からの顔なじみであり、年齢的にロバンの方が『倍以上も上』であることもあって、『格式ばった公の場』以外では、砕けた口調で話している。
「いらんよ、護衛など。そんなものをつけとったら、交渉にならん。ワシは、かの殺人鬼とパートナー契約を結びたいと思っておるんじゃ。不快な思いをさせる気は一切ない」
深みのある老人口調でしゃべる美少女。
彼女――『セイラ・アカナティス・インサイドギル』は、濡れ羽色の、腰まで届く長い髪と、闇を投影させているような真黒な瞳、そんな漆黒の瞳や髪とは真逆の真っ白な肌が特徴的な超絶的な美少女。
年齢は10歳と、破格に若く、見た目も相応だが、精神年齢だけは100近いという、ギャップがエゲつない少女。




