75話 言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごい自信だった
75話 言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごい自信だった。
「俺の手ゴマになるなら、上級国民を殺してもらうけど、それでもいい? もし、必死に働くなら……そうだな……さっき回収した、この……えっと……セレス? このオバハンを、蘇生させてやるよ。ただし、ニコトピアを復活させたあとだけど」
気づけば、死んだはずの私は、
現世で目を覚まし、カミノの足元でピクピクしていた。
……カミノの言葉がなくとも、おそらく、なんとなく、感覚で分かっただろう。
私は一度死に、そして、甦った。
「……死者を……本当に……復活させることができるのか……」
「人間だけじゃなく、世界も復活させられるさ」
言葉の意味はよく分からなかったが、
しかし、すさまじい自信を感じさせた。
いや、自信というよりも狂気。
決死の覚悟。
「……セレスを……よみがえらせてくれるのであれば……何でもする。最終的に、私を殺してくれてもかまわない……だから、その約束だけは……どうか……どうか……守ってほしい」
「じゃあ、今後、あんたはジェイズの裏メンバーってことで、よろしく。ちなみに、あいつらは、今、俺の指示で、テキトーな上級国民を殺している。あんたは、その補助に入ってくれ」
――こうして私は、殺人鬼の手先となった。
別にかまわない。
上級国民が何人死のうと、どうでもいい。
セレスを取り戻せるなら、私は何でもする。
★
カラミドをジェイズの裏メンバーに加入させて以降も、
カミノは、『使えそうなまともなヤツ』を、バンバン、
ジェイズのサポートメンバーに加えていった。
最終的に、10人近い大所帯になり、
1日に殺せる上級国民の数も増えてきた。
すでに、数千人単位で、上級国民が暗殺されてしまった。
こうなってくると、
『国家』もさすがに、ぬるい体制ではいられない。
本気で、殺人鬼をつぶす覚悟を国民に示した。
ただ、ここまでくると、
国民の中には、殺人鬼を応援する派閥というのも出てきた。
なんせ、殺人鬼は、『権力をふりかざす上級国民を、ハジからぶっ殺してくれる存在』で、一般市民には、絶対に手をださない。
上級国民を、護衛している冒険者は殺されているようだし、上級国民の屋敷で仕事をしているメイドや執事も、『抵抗』した場合は殺されているようだが、しかし、無抵抗を貫いた場合は、どうやら殺されていないらしい。
殺人鬼の目的は、あくまでも『上級国民である』という理解が広まると、一般市民の中で、殺人鬼に対する恐怖心はなくなった。
国がバタバタして、生活面でも、色々と物価が上がったり、市政が滞ったりして、迷惑な部分もあるが、しかし、それ以上に、痛快だというのも事実だった。
庶民の中では、
上級国民専門の殺人鬼が希望になっていた。
――そんな、奇天烈な展開に、一番危機感を覚えていたのは、
国でも、上級国民でもなく、
噂の殺人鬼本人だった。
(希望を与えてどうするんだよ……俺が振りまかないといけないのは絶望だろうが……)
などとつぶやきつつ、
右手首に巻かれている絶望ウォッチの数値に目を向ける。




