72話 私の、たった一つの夢。
72話 私の、たった一つの夢。
――願いが叶ったのは、10回目の結婚記念日。
惰性で買ったプレゼントを片手に、家に戻った私の目に飛び込んできたのは彼女の死体。
犯人はすぐに捕まった。
裏稼業の人間で、これまでに何度も悪事を重ねていたこともあって、死刑となった。
私は、犯人に感謝をした。
妻にも、私にも、『生命保険』がかかっており、
どちらかが死んだ場合、どちらかに3000万テスが入るようになっていた。
私は、自由と大金を手に入れた。
その足で、私は、ギルドの事務員を退職した。
そして、冒険者に戻った。
3000万テスは、すべて、装備品とアイテムに変えた。
昔は『5つ星』にしかなれなかったが、
高品質な装備品を手に入れた私は、
すぐに、『8つ星』まで駆け上がることができた。
アイテムは偉大だ。
金の力は本当に大きい。
……正直に言うと、昔の私は、女にモテるために冒険者をしていた。
上位の冒険者は、地位と名誉と富をもっているため絶対的にモテる。
5つ星にしかなれなかったから、さほどモテなかったが、
それでも、それなりに美人の妻をゲットできた。
――総合的に『結論』まとめると、『5つ星』ではダメだ。
それでは、何も得られない。
というわけで、私は、『高み』を目指すことにした。
ハンパな努力しかしていなかった昔と違って、
死に物狂いで頑張って、8つ星まで、すぐにたどり着いた。
どうやら、私には、それなりに才能があったらしい。
正直、昔は、そんなに頑張っていなかったから伸びなかっただけ。
今は違う。
護衛任務も、討伐任務も、石にかじりつくような勢いで頑張った。
結果、私は『8つ星』を超えて、『9つ星』にまで到着した。
嬉しかった。
『9つ星冒険者』と言ったら、昔は、『手の届かない領域』だったから。
私は、9つ星になってからも、必死になってガンバった。
とにかく金になる仕事を中心に、
どれだけ大変でも、どれだけ命の危険がある仕事でも、
私は、必死にくらいついて評価をあげていった。
――そして、ついに、
私は、
冒険者の最高峰である『10つ星』の領域に届いた。
苦労した。
本当に頑張った。
大変で、大変で、仕方なかったが、
ようやく私は、10つ星に届いた。
ここまでくれば、報酬の額も跳ね上がる。
上位の上級国民から依頼を受けることもある。
国指定の禁忌級ダンジョンに自由にもぐる事もできる。
これなら、『夢』を追うことができる。
私の夢。
――『死者を蘇生させる術』を手に入れること。
古文書などを読み解けば、
どうやら、その手の技法も存在するらしい。
力と金があれば、その秘術を求めることができる。
というか、力と金がなければ、その手の秘術の秘密に近づくことも出来ない。
私は必死になって死者蘇生の術を求めた。
そんな日々の中で、
私は、割りのいい仕事を受けた。
最近流行っている、『上級国民を中心に狙う殺人鬼』から、とある上級国民を護衛するという任務。
その任務が、私の最後の任務になった。
偶然なのか、必然なのか、それは分からないが、
例の殺人鬼は、私が護衛していた上級国民を狙ってきた。




